機械的結合を主体とする組立品の部・金賞
厚生労働大臣賞


『遠心分離機』
株式会社田中技研 (愛知県江南市)
(写真1) 遠心分離機の機能を活かした部品洗浄機のドラム部。曲げ構造を主体として組み立てた  
 
 
速回転による大きな遠心力によって比重差を増幅させ、純度の高い分離を行うのが遠心分離機。 受賞製品はその遠心分離機の機能を活かして部品洗浄を行う洗浄機のドラムである。
 受賞企業の田中技研は業務用クリーニング機械の製造メーカーとしてスタート。洗濯槽の回転技術を高度化して 現在では工業用遠心分離機の専業メーカーにシフトしている。遠心分離機能を活かしたカスタム仕様の各種部品洗浄機を 製作の主体としているが、ペール缶から油を回収する自社ブランドの脱油機(実用新案取得済み)は累計販売台数1万台を超える ベストセラーになるなど、遠心分離技術をベースとした商品開発力には定評がある。マシニングセンターをはじめとする工作機械、 NCタレットパンチプレスなどの板金加工機械も完備し、開発・設計から完成品まで一貫して内作対応を図っているのも 大きな特徴だ。
   
(写真2) 蓋を閉めた状態   (写真3) 上蓋を開けた状態   (写真4) 洗浄篭の蓋も開けた状態
 
フロンの環境対策を背景にして、水切れのよい遠心分離機能を組み込んだ温水方式の洗浄機に需要が高まっている。 受賞製品はベアリング用の温水式遠心分離洗浄装置のドラムであるが、形状は高さ450mm、直径240mm。 イナーシャーを大きくすると振動が出ないためにドラム全体の質量は20kg。毎分1200回転し、回転時の負荷は350G。 篭ホルダー、蓋、部品篭によって構成されている。部品篭は部品形状によって一品一様だ。このドラムを回転台に載せ、 3分回転させて洗浄完了となる。
 設計・製作の留意点は、高速回転するだけに重量、形状とも左右のバランスをとること。 そして負荷がかかるために変形しないよう強度を持たせること。なかでも強度保持がポイントとなり、 そのために曲げ構造を主体とした工法をとっている。溶接構造にすると溶接技術が形状精度と強度に直接影響するうえに 工数もかかるため。複雑な曲げは避け、単純曲げを連続して組み合わせる手法をとっていることに注目したい。
 
(写真5)洗浄篭の部品ホルダー。ホルダーの間に洗浄部品を配置する
 部材はすべてVIPROS-345で多数個取りする。水はけとなる側面も、パンチングメタルを用いずに曲げ形状に合わせた 位置に穴あけする方法をとっている。パンチング精度がよく、結果として工数削減につながるためだ。コーナー部に穴のセンターが くるようにし、水の溜まりができないようにする工夫もなされている。
 篭ホルダーの勘合の位置決めは、上下部のリングの穴が基準となる。溶接前の曲げ部材を順次穴位置でビス止めし、 位置決めされた各曲げ部材を部分溶接によって固定する。これで篭ホルダーは完成だ。調整はほとんどない。
 
(写真6)篭ホルダーはパンチングメタルを使わず、曲げ形状に合わせNCTで穴あけを行っている
 

(写真7)ドラムの底部。スリップ止めの穴があけられている

(写真8)ワークの供給を止めることなく処理できる全自動脱油機
 
(写真9)ペール缶の脱油機 
は三層になっており、ロックの役割をするヒンジがこわれても回転中に蓋が開かないように中層部の蓋が 二層のスペーサーによってリングの間にできた空間に張り出して自動ロックする構造が特徴。ロックとなるヒンジをスライド させると自動的に中蓋がスライドする方式。安全性に最大限の考慮がなされている。
 洗浄篭は脱着可能。篭にも押さえ蓋が取り付けられており、部品形状に合わせて縦に間仕切りのように配置されたホルダーの 形状も変更されることになる。
 因みに、材質は試作品のためSPCC(板厚2.3、3.2mm)主体、一部にステンレス、アルミが使われている。
 
 

株式会社田中技研
本 社 愛知県江南市小折本町栄199
TEL 0587-55-2003
工 場 愛知県江南市小折町八反畑195
営 業 所 大阪市中央区玉造2丁目16番23
ダイアパレス玉造公園1002R
設 立 1975(昭和50)年6月
代 表 者 田中懸一
社 員 数 10名
事業内容  工業遠心分離機、洗浄機、アッセンブリー治具の製造・販売
   
   
 
田中懸一社長