溶接を主体とする組立品の部・金賞
日刊工業新聞社賞


『粉末流出シュート』
株式会社森岡製作所
(京都市南区)
(写真1) 粉末剤を分別から包装まで自動的に処理する装置の一部。プラモデルをつくるのと同じように溶接で組み上げている。    
 
 
年(2001年)、初めてのフェア出品で技能賞を受賞し、今回、2回目の出品で金賞と日刊工業新聞社賞の受賞に輝いた。
 受賞製品である粉末流出シュートは、必要な薬剤を分別から包装まで自動的に処理する装置の一部。大手製薬会社に設置されている。2本の円筒は、内部で仕分けされた粉末剤の良品と不良品を区分けするシューター。良品シューターから流出された薬剤のみが包装され需要者に渡ることになる。
 流出シュート全体の製品寸法は、円筒のシューター部から見て、幅160mm×高さ 235mm×奥行450mm。材質はSUS304、板厚1.5mm、全体寸法を±0.3mm以内におさめている(ただし寸法はユーザーによって異なる)。
 加工順序は、CADによる展開後、レーザー加工機による部材取り→ベンダーによるR曲げ→仮止め→TIG溶接→歪みや変形の修整→内面削りと仕上げ。

 
(写真2)


(写真3)

(写真2、3) 溶接箇所が全くわからない一枚物のように仕上げることにより、ステンレスの持つ美観と滑らかさを引き出すことを加工の留意点としている。

  賞製品は、受注製品に新たな創意工夫と熟練の技術を加味したうえでの 出品となった。
 「板取りし、レーザー加工機で切り出した各部材をまるでプラモデルをつくるように組み上げていくのが最大の特徴でしょうか。円筒部も 板をロールで巻いています。溶接箇所が全くわからない一枚物のように仕上げることにより、ステンレスの持つ美観と滑らかさを最大限に引き出すことが できました」(土田晄三社長、以下同じ)
 加工のポイントは、@溶接後の歪みと製品寸法との兼ね合い、AR曲げと角つなぎ目の接続部分、B 内面削りと仕上げに対する工具の選定、C外観の美観と粉が滑らかにすべり落ちる設計形状、の4点。
 「部材を一つひとつ溶接で組み上げていく方法を とっていますが、そのままでは歪みが累積してしまいます。いかにして歪みを相殺して逃がしていくか、加工順序、歪みの範囲の把握等々、私どもがこれまでに培ってきた 溶接のノウハウを活かした製品ならではだと自負しています。手作りならここまでできますよ、という思いを込め板金加工の限界に挑戦したのが受賞製品なのです」

 
 円筒およびその周辺のR曲げとつなぎ目になる平板との接続部も溶接にとっては難加工の一つ。しかもRと角との接合部は裏側にでるビードは微細で均等にしなければならない。シューター内を落下する粉末剤を流出させないために、そして衛生面からもそれを削り取らなければならないからである。そのための工具の選定にも試行錯誤があったという。
 「シュート内部は外からなかなか見えにくく、手探り状態で仕上げる工具が必要です。工具の選定が難しい所以ですが、結局は自社内で工夫して独自のものをつくって難題を解決しました。適正な工具を開発するまで苦労も多く、時間もかかりましたが自分たちの力で解決できたという達成感は何ものにも代えがたいものがあります」

 
(写真4)


(写真5)

(写真4、5) R曲げとつなぎ目の接続部分は培った自社技術とノウハウを最大限活かした微細溶接により接合されている。

  用機器部品と半導体製造機器関係の精密板金加工を2本柱とする同社だが、特に医用機器の分野に力を注いでいる最中だけに、今回の受賞は望外の喜びだったという。早速、ホームページで受賞製品を掲載、その引き合いの多さに驚く日々でもある。
 「お客様には受賞について積極的にPRさせていただきましたが、この受賞効果を本当の意味で実感できたのは、あるお客様から賞状をコピーさせて欲しいといわれたとき。改めてこの賞の価値と重みを再認識させられました」
 約1年前から、絶えざる工場レイアウトの見直しなど、生産革新活動、3S活動をスタート。これらの活動を通した、研鑚と精進の日々から、どのような新らしい技術が育まれてくるのか。次回の出品が楽しみである。

     

株式会社森岡製作所
本 社 京都市南区東九条西河辺町23
TEL 075-672-1351
創 業 1947(昭和22)年6月
設 立 1961(昭和36)年9月
代 表 者 土田晄三
資 本 金 2225万円
社 員 数 15名
事業内容  医用機器部品、半導体製造機器関係などの精密板金加工
U R L http://www.morioka-ss.co.jp/
E-mail tsuchida@morioka-ss.co.jp
 
土田晄三社長