造形を主眼とする組立品の部・銀賞

『パイプで創る干支(馬)』
株式会社桑田金属製作所 (大阪市)
(写真1) パイプをレーザーカッティングし、手曲げで最終形状にしている。パイプインデックス機能を活用した創作品である。  
 
 
田金属製作所のホームページには、"最新鋭機技術と当社で培われた曲げ、溶接等の職人技術!""パイプも自由自在に切れるレーザー技術!"と自社技術のポイントが謳われている。実は、大阪市内において板金加工用のレーザー加工機を初めて稼働させたのが桑田泰彦社長。1982(昭和57)年のことであった。以来、レーザー加工技術と熟練技術を融合して高い受注力を確立させてきた。
 レーザー加工機も現在では4代目が稼働し、東工場はレーザー専用工場。YAGレーザー溶接機も導入して、"レーザーのクワタ"の名をさらに高めている。
 
(写真2)

(写真2〜3) 受賞製品のうち、小型のものを斜め上と底から見た状態。
 
(写真3)
 

(写真4)
  賞製品は、レーザー加工のパイプインデックス機能を利用して桑田社長が考案したものだ。パイプインデックスは、テーブルのY軸移動を回転移動に変換して3次元形状のカッティングを可能にする装置機能。当初は、タンクのノズル取り付け穴を加工するために導入したものだが、その機能をアピールするために考え出したのが各種のオブジェだった。初期の門松や恐竜などは展示会やテクノフェアなどに出品したこともあって、マスコミに大きく取り上げられることになる。読売新聞や産経新聞などの全国紙に紹介されたのをはじめ、"鯉のぼり"は大阪の地場産業の方向性を示す象徴としてNHKで大きく取り上げられ話題となった。
 1991(平成3)年から干支の製作が始まり、写真6のにように昨年で十二支が完成した。最近では、きり絵作家の久保 修氏の作品をレーザーカッティングし新たな世界に踏み出している。
 
田社長は各種オブジェに取り組んだ動機を次のように説明する。
 「基本に遊び心がありますが、機械と人の技を融合させた遊びのなかで培われた技法の確立に、私どもがこれから生き残っていくための重要なポイントが隠されていると考えているのです。機械を使って遊んでいくなかに、ノウハウの蓄積があり、コストの認識が生まれ、真の創造性が育まれてくるのです」
 創作には意外なことにトイレットペーパーの芯を使っている。円筒状の芯の表面に図柄を一筆書きしたうえでそれを平面に開いて図柄をスキャニングし、パイプインデックス仕様のデータに転換する。受賞製品は板厚1.0mmのSUS304だが、パイプ径、板厚、曲げ幅によってスリットにするか抜きにするかなど、複雑な造形を通してノウハウの集積を図っていることがわかる。
 受賞製品のR部分は基本的にパイプのR形状を活かしており、他は手曲げである。

 
(写真5)
(写真4〜5) 受賞製品のうち、
大型のものを斜め下と底から見た状態。
 

  田社長は、東工場のレーザー加工部門を2002年6月から"金属考房ゆう"として独立させている。従来の社内加工に加えて、より幅広いニーズに対応させていくためである。工房を"考房"とし、"ゆう"は遊、優、悠に通じる。
 「常に半歩先を進みたい」という桑田社長。最新技術と職人技術の融合とそのバッファとなる遊び心から次に何が生み出されてくるのか楽しみである。
(写真6) 1991(平成3)年から干支の製作が始まり、
2002年で十二支を完成させている。
 

株式会社桑田金属製作所
本 社 大阪市東成区神路3-2-8
TEL 06-6975-2234
中 工 場 大阪市東成区深江南1-3-24
金属考房ゆう 大阪市東成区深江南2-2-3
設 立 1960(昭和35)年
代 表 者 桑田泰彦
資 本 金 1000万円
社 員 数 30名
事業内容  精密板金加工、製缶加工、レーザー加工
U R L http://www.kuwata.co.jp
E-mail kuwata@mail.infomart.or.jp
 
桑田泰彦社長