造形を主眼とする組立品の部・金賞

『サッカーボール状の装飾用球体』
株式会社米森金属工業 (鹿児島市)
(写真1) 仕上がり形状は直径150mm。実際のサッカーボールと同様に、正六角形20ピースと正五角形12ピースで組みあがっている。  
 
 

(写真2)

(写真2〜4) 材質はSUS304。
正六角形の部分がミガキ、正五角形の部分がカラー。板厚は1.2mm。
  賞製品は、サッカー大会で関係者に贈る記念のトロフィーとして開発されたもの。根っからのサッカー好きで、鹿児島県サッカー協会の役員として、地域の指導者として長年にわたって少年サッカーにかかわり続けてきた米森節夫社長のアイデアから誕生した。ホテルやデパート、公共施設向け装飾金物の設計施工を中心に事業展開してきたなかで培ってきたステンレス加工の技術を活かし、製品化したものだ。1998(平成10)年には実用新案登録もなされている。
 仕上がり形状は直径150mmで、ハンドボールよりもやや小さめ。構造はサッカーボールと同様に、1辺33mmの正六角形20ピースと正五角形12ピースで組み上がっている。材質はSUS304。正6角形の部分がミガキ、正五角形の部分がカラー。板厚は1.2mm。
 加工手順は次のとおり。

@ 六角形と五角形それぞれの専用抜き型によりプレス加工(台座ポールに取り付ける部分のピースはあらかじめネジ止め用の穴をあけておく)。ブランク材を作成する。
A 球面を構成するピースの形状に合わせたR金型によりブランク材をプレスで絞り、構成ピースを作成。
B 球体を上部分と下部分に分け、それぞれ内側から各ピースが接する3つの角の頂点をTIG溶接により点付け溶接して半球を作成していく。
C 上部分と下部分をつけて、最後に残された上部分の1ピースを点付けで溶接し、磨き仕上げをかけて完成。
 
術の幅を広げる意味もあって7年前から取り組んできたものだが、今日見られるような状態に持ってくるまでにはトライ&エラーの積み重ねだった。
 「最も苦労したのはR金型の開発。試作段階では正六角形と正五角形を平らにつなぎあわせ、そこからたたきながら曲げて球体に整えていく方法をとったのです。そこからピースごとにRを割り出し、専用金型をつくりました。しかし勘が頼りの手作業。失敗の繰り返しでした。本業の合間を縫いながらということもあって納得の行く出来栄えになるまでには3年ほどかかりましたね」(米森社長)
 
(写真3)
 

(写真4)
   溶接の良し悪しが外観の品質に直接影響するため、理想的な溶接法を見出すのにも試行錯誤した。特に材質がステンレスだけに全周溶接すると歪みの問題が生じてくる。これを避けることから点付け溶接がベストと判断した。溶接順位の決定と、それにともなう溶接の最適条件の割り出しがもっとも苦心した点だ。
 「約60カ所の溶接ポイントがあり、歪みはもちろん、焦げやキズには細心の注意を払わなければならない。なかでも最終工程は見栄えを左右する外側からの溶接となるため、最も神経を使ったところです」(米森社長)

 
初の出展で金賞受賞となったため喜びもひとしお。
 「出展を決めたときが、ワールドカップが間近に迫っていたときで、タイミングが良かったですね。受賞は今後の大きな励みになります」(米森社長)
 2000(平成12)年に全国中学校体育大会のパンフレットに掲載されて以来、引き合いが増えてきている。なかにはゴールドに塗装した豪華版として仕上げたケースも。今後はさらに技術に磨きをかけ、六角形プレートに個人名を刻印する特別仕様のものなど、"米森オリジナル"の充実を図っていく構えだ。
 

株式会社米森金属工業
本 社 鹿児島市新栄町31-25
TEL 099-256-6995
創 業 1970(昭和45)年2月
設 立 1995(平成7)年2月
代 表 者 米森節夫
資 本 金 1500万円
社 員 数 17名
事業内容  精密板金加工、装飾建築家具等、各種金物設計加工
U R L http://www.yonemori.jp
E-mail info@yonemori.jp
 
米森節夫社長