微細加工部品の部・銀賞

『外装部品』
株式会社菊池製作所 (東京都八王子市)
(写真1) 材料をクラッド材に換え、ヒール型構造を採用することによってプロセスイノベーションを実現した。
時計の表蓋である。削りだしか精密鍛造、精密鋳造に依るのが一般的であった時計外蓋の製作を、板金プレス加工に工法を転換することにより大きなVA効果を発揮したのが受賞製品である。最近は、省資源、コストダウンを目的に、切削、鋳・鍛造からプレス加工へ工法を転換することが普遍的に行われており、塑性加工におけるひとつの流れとなっている。今回は、プロセスイノベーションの実現を評価されての受賞となった。


(写真2) 左がステンレスを通常の型で曲げ絞りしたもの。右がヒール構造の金型でクラッド材を成形したもの。


(写真3)

(写真4)

(写真3〜4) 写真2の曲げ部を拡大。上の写真がステンレス、下の写真がクラッド材。クラッド材の曲げ部が鋭角になっていることに注目。

金プレス加工へ工法を転換するのにあたって課された条件は、同社が"稜線加工"と呼ぶように曲げ部のエッジがきちんと立つこと。高級時計の必須条件のためだ。通常、一般曲げの場合はRが板厚の2倍強となるが、それを極限の最小Rまで追い込むことが加工のポイントとなった。

 同社が課題解決のために数々の模索のうえに取り組んだのが、"材料"と"金型構造"を見直すこと。それが成功に導く要因となる。材料は従来のSUS304-1/2H材(板厚0.6mm)から、SUS304(板厚0.3mm)とアルミニウム(板厚0.3mm)で構成するクラッド材(2層材/板厚0.6mm)に転換し、金型は細パンチの横ぶれを防ぐヒール構造を採用した。結果、板厚0.6mmのSUS304-1/2を一般曲げした場合、最小Rが板厚の2倍以上の1.6あったものが、ヒール構造の金型を使ってクラッド材(SUS304+AL/板厚0.6mm)を曲げると、最小Rが0.25と板厚以下のシャープな稜線を持つV曲げ構造が得られたのである。

 「パンチが直接あたる軟質のアルミが緩衝となり、外側のステンレスに加工硬化がおこらないために板厚以下の曲げRが可能になったのです。ステンレス加工に比べて加圧能力の少ないプレス機械で加工が可能となり、型持ちもよくなりました。曲げ角度や絞り形状を工夫することにより、より微細な最小Rを持つ稜線加工が可能になると考えています」(菊池 功社長)

 受賞製品は、表題をあえて『外装部品』としている。最小曲げRによる稜線加工が、時計の外蓋のみならず、カメラや電子手帳など多様な製品の外装部品に適用できることをあらわしたもの。これからの適用分野の拡大に注目したい。


(写真5)

(写真5〜6) より複雑な形状の成形例。
クラッド材は大幅な軽量化も実現。


(写真6)

池製作所は、"筐体部品からコネクターまで幅広い分野でお客様のニーズに応える高精度試作部品会社"であることを標榜する。実態は試作から量産までを守備範囲とするが、板金・プレス加工のみならず、切削、樹脂成形、マグネシウム加工、メタルインジェクション、さらには20数台の汎用/ワイヤーカット放電加工機を擁する金型加工部門と、製品加工に関する総合力を有し、製品の開発・設計・試作からアセンブリーまでを社内で消化するユニットメーカーでもある。海外拠点として中国での試作センターを目指す中国工場(中国広東省東莞市清渓鎮漁梁圍管理区)も稼働を始めており、今回の受賞製品も同社の総合力によって必然的に生み出されたものであることを見逃してはならない。


株式会社菊池製作所
本 社 東京都八王子市美山町2161-21
TEL 0426-51-6093
創 業 1970(昭和45)年4月
設 立 1976(昭和51)年3月
代 表 者 菊池 功
資 本 金 5000万円
社 員 数 193名
事業内容 精密板金加工、機械加工、プラスチック加工、簡易モールド型設計製作、マグネシウム加工、チクソ・モールディング、M・I・Mメタルインジェクションモールド、精密プレス金型設計製作、プレス加工、省力装置設計・組立、製品開発・製造
関連企業 菊池ヘルスクリエイト株式会社 
韓国KIKUCHI株式会社、 菊池(香港)有限公司
U R L http://www.kikuchiseisakusho.co.jp

菊地 功社長