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第15回優秀板金製品技能フェア優秀製品
溶接を主体とする組立品の部・金賞
中央職業能力開発協会会長賞


『ダクト』
株式会社高村興業所(広島県佐伯郡)
(写真1) 機械本体から微粒な粉体を外部に排出する通路のカバーとなる。高精度切断を行うレーザー加工、高度の熟練技術に裏打ちされた曲げ加工、TIG溶接による組立技術を融合させ、永年のノウハウをベースとした “まとめ技術” によって完成度の高い試作品となっている

 

 
(写真2)

(写真2〜4) 上部はパイプを切断して構成、中央部の円錐はブランク材をプレスブレーキでロール曲げ、下部はローラーで真円に曲げている。各部材の形状精度、面精度を高いレベルで維持することによって、溶接の効率化と高品質化を実現させている

賞製品は半導体の製造工程に組み込まれるダクト。前回に続いての連続受賞(第14回優秀板金製品技能フェア/溶接を主体とする組立品の部・銀賞)となった。
 「日常の作業で行っている当り前のことを、基本に忠実に、着実に実行して仕上げました。ポイントをあえて言えば、構成する部材の加工を一つひとつていねいに、真円度などの要求項目を確実にクリアーしながら完結させたことでしょうか。総合力の成果だと考えています」と語るのは高村正和社長。

 高村興業所の内製機能をみると、NC旋盤、マシニングセンターなどの機械加工から、板金・プレス加工はもちろんのこと、帯鋸盤、ロールマシンなどの周辺機器も完備。溶接も、CO2、TIG、YAG溶接機ともロボット化しており、溶接ロボットだけで計4基が稼働するという充実ぶり。日ごろから円筒状の加工に高い実績を有していることにくわえて、ISO9001認証をベースとした品質管理技術がトータルに融合して今回の受賞に結びついていることがわかる。
 高村社長が"当り前"という技術が、グローバルな視点で普遍的に評価したときに、それが高い峰の頂にあったことに注目したい。



(写真3)
 
品は11の部材で構成されている。材質はSUS304、板厚はすべて1.5mm。11の部材を大別すると、継手となる上部、テーパーの付いた中間の円錐、そして下部の機器コネクト部の3点になる。

 上部の継手部は、パイプを角度切断した5部材をTIG溶接で円周溶接して製品形状にしており、第一のポイントとなるのがパイプの真円度。素材の選定が重要となる。鋸切断でも真円のゆがみを防ぐために、切り込み圧力に考慮が払われており、切断された部材は定盤の上で切断面の擦り合わせが行われる。パイプを切断した部材と部材の突き合わせ溶接になるためである。部材間のすき間は限りなくゼロゼロに近づけるが、YAG溶接の場合は0.2mm以下、TIG溶接のときは0.5mm以下が目安となる。"擦り代(しろ)"も見込んで切断幅を決めるという。今回の場合は、円周溶接はTIGで、縦溶接はYAGレーザーによって行われた。
 なお上部先端には、幅20mmで全周にわたって0.5mmの削り加工がNC旋盤により行われている。高い真円度が要求される所以である。

 テーパーの付いた中間円錐は平板をNCTで外周切断し、プレスブレーキでロール曲げを行ったもの。ここでもどこまで真円に近づけるかがポイントとなる。ロール曲げはNCバックゲージのクセまでもつかんだうえでの加工となり、熟練の技がさえる部分だ。特に継ぎ合わせ部は自然な円形状を維持しなければならないため、端曲げにも十分な留意がなされている。
 下部の張り出し部分は、ロールで真円に曲げたものをYAGレーザー溶接で円筒にし、レーザー加工機で円状に中抜きした板材をTIGで円周上を溶接。テーパー状の円筒に付けられる。
 最下部の円筒はやはりロール曲げとYAGレーザー溶接によって形状にし、ここでは接合ではなく、上部に押し込む嵌合の方法がとられた。内側と外側の伸び代を計算して円筒加工が施されており、途中で引っかかることもなくスムースな嵌め合わせが実現している。



(写真4)

 
「YAGレーザー溶接機を導入してからは、競争心からでしょうか以前より社員のTIG溶接のウデが上がりました。今回の受賞製品もその成果の一つと考えています。円錐状のロール加工も含めて特別な仕上げをすることなく、全体にキズが少ない点も評価されたのではないでしょうか」と語るのは製作を統括した高村隆晴専務。
 上記工程は、各部署持ち回りで行われており、各部材の形状精度、面精度の高度化を追究し標準化していくことが、溶接の成否を決め、最終的に製品形状を決定するという認識が現場に徹底していることがわかる。

  「表彰式において審査委員長の木内先生が、"技術が無ければ高度な製品は作れない。技能が無ければ独自の製品は生まれない"と技術と技能の融合の重要性を述べられましたが、私どももここに視点を置き、独自の優位性を築き上げていきたいものです」と、高村社長、高村専務ともども今後の新たな展開に強い意欲を示している。


■株式会社高村興業所
本 社 広島市南区皆実町1-8-25
工 場 広島県佐伯郡大野町下更地1790-1
TEL 0829-56-1141
創 業 1949(昭和24)年
設 立 1961(昭和36)年9月
代 表 者 高村正和
資 本 金 3000万円
社 員 数 49名
事業内容 半導体製造装置部品、印刷機カバーなどの精密板金加工・機械組立・部品加工
U R L http://www.takamura-kk.co.jp/
E-mail takamura@takamura-kk.co.jp
高村正和社長 高村隆晴専務