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第15回優秀板金製品技能フェア優秀製品
機械的結合を主体とする組立品の部・金賞
日刊工業新聞社賞


『ミニチュア アペリオ』
株式会社マスダ(長野県上伊那郡)
(写真1) レーザー・パンチ複合機APELIOを忠実に複製したミニチュア。縮尺率は5分の1。板金加工、切削加工、組立技術の総合力から生み出された

 

 
(写真2)

写真2〜3 板金加工のポイントは、本体コーナーのR面。精度面・美観面からも、仕上げには特に気を使った
回、初出品でダブル受賞という栄冠を獲得した製品は、企業競争力を強化するために、新たな展開へ向けた取り組みの中から生まれたものだ。

 同社の創業は1962(昭和37)年。大手光学機器メーカーの協力工場として、切削加工分野での特化した技術力を背景に大きな成長を遂げてきた。しかし、1990年代後半から発注先の拠点が海外へシフトするのに伴い、同社も3社協同でフィリピン・セブ島に"INA MICRO OPTO CO."を2000(平成12)年1月に設立するなど、新たな対応を迫られることになった。

 「必然的に国内に残された加工品は多品種小ロット、しかも、筐体やカバー加工などとのセットにした発注になってきた。新たな展開を図るには、板金加工部門の立ち上げが早急の課題でしたが、そのための技術も設備もない。その模索のなかで板金加工の核となってくれる経験豊かな技術者との出会いがあったのです。私のモットーは"即断速攻"。早速、アペリオをはじめとする機械設備を導入し、2000(平成12)年6月に、板金加工部門を立ち上げたのです」(増田 清社長)

 この立ち上げによって、開発・設計から切削加工、板金加工、組立に至るまでの総合力を構築することになり、今回の受賞製品"ミニチュア アペリオ"の誕生に結びつくのである。



(写真3)
 
"ミニチュア アペリオ"は、2001(平成13)年に開催された展示会(機械要素技術展)のために製作されたもの。出展に当たって、製作グループのリーダーであった増田博取締役(設計・シートメタル事業部)が第一に考慮したのが、板金加工を含めた"総合力をアピールする"こと。そのコンセプトに見合った製品を模索する中で、目にとまったのが、前年(2000年)に導入したアペリオ(APELIOV-357V)であった。アペリオのミニチュア(本体の5分の1)を製作することは、板金加工分野への進出を広く宣言することにもなるからである。

 「設計(展開図面は約100点)で最も腐心したのは、アピールしたい切削加工、板金加工を、どの部分にどのような形で表現していくかということでした。結果的にその集大成が"総合力"のアピールにつながっていくからです。設計に2週間、加工に2週間で完成しました。具体的にいうと、タレットやクランプ部、ブラケットなどの小物部品のほとんどは切削加工ですが、なかでも注目して欲しいのが、±0.01mmの精度を持つ金型。本物と見間違うほどの"リアルさ"からも、切削加工に対する高い技術力をわかっていただけるものと自負しています。機械前面の"MASUDA"の文字は、切削加工で削り出したものです」(増田取締役)

 
(写真4) モーターにより加工テーブルが前後左右に動き、 レーザー部のヘッドが上下するなど、本体と同様の動きをする
 板金加工のポイントは、本体コーナーのR面。このR面は溶接加工が施されているため、精度面・美観面からも、仕上げには特に気を使ったという。また、機械上部の細いパイプの曲げもアピールしたい技術力の一つ。パイプを変形させずに曲げるのには、高度な技術が要求されるからだ。

 さらに、"アピールする効果をより高めるためには、動きが一番"という増田社長の提言から、モーターにより加工テーブルが前後左右に動き、レーザー部のヘッドが上下するなど、実機と同様の動きをするという、心憎いばかりの仕掛けが施されている。

 因みに、使用材質はSUS430、SUS304、SPCCの3種類。板厚は0.5〜6.0mm。


「2003年5月には、量産品加工部門を分社化し、生き残りをかけて新たな一歩を踏み出しました。そのためには頭一つ抜きんでた技術力を蓄積していかなければならない。その意味で今回の受賞は、現場の社員にとって大きな励みとなっています。今後は微細・極小製品の精密加工も視野に入れていきます」(増田清社長)



■株式会社マスダ
本 社 長野県上伊那郡宮田村6689-1
TEL 0265-85-2086
創 業 1962(昭和37)年2月
代 表 者 増田 清
資 本 金 1500万円
社 員 数 130名
事業内容 医療機器・光学機器・空気油圧機器などの部品加工と組立。精密部品加工用治工具、一般製造組立、専用機器設計・製作。レーザー加工および精密板金加工。
U R L http://www.mtoufu-kobo.co.jp/masuda/
E-mail m.info@mtoufu-kobo.co.jp

増田 清社長

増田 博取締役