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第15回優秀板金製品技能フェア優秀製品
造形を主眼とする組立品の部・銀賞


『飛翔』
鈴木製作所(千葉県柏市)

(写真1) バーナーで熱を加え、コツコツと叩き出して形状にした。完全手作りである。3カ月を要した。

 

 


(写真2)

(写真3)
写真2〜3  飛び立とうとするところを表現した。躍動感がある。

木社長のモノづくりへの想いは強い。父の代から金属加工業の経営が始まり、兄弟、従兄弟もまた精密板金加工の世界にいる。ルーツをたどれば飾り物の金工職人に行きつくという。モノづくりの血が脈々と流れつがれていることがわかる。受賞製品も従兄弟がつくった金属製の風見鶏に触発されて製作に着手したものだ。

鳥がまさに飛び立とうとするところを造形したものである。水鳥の写真を模写し、平図に展開してスタートした。素材は、銅のなかでも比較的軟らかい材質のC1100Pをつかい、すべて手づくり。バーナーで熱を加えながら、銅板をこつこつと叩き出して形状をつくりだしていった。最も留意したのが素材の伸び率だ。叩きすぎては割れが生じてしまう。伸びの程度を確認し、手になじませながらの作業となった。

 




(写真4)

(写真5)

(写真6)
写真4〜6  材質の特性を手で感じ、伸び率を確認するなど、加工の原点を探り、日常業務を再確認する作業となった。
 
部から尾にいたる"胴体部""2枚の羽根""足"によって構成されている。胴体部の板厚は0.6mm、羽根部は0.8mm。同一の板厚ではなく、胴と羽根に0.2mmの差をつけたのも、銅板は板厚が薄いと伸びがいいかわりに加工硬化がはやく、厚いと微妙なR形状が出にくいものの強度が保ちやすく加工性がいいという特性を考慮したため。加工のポイントとなったのは、胴体部の左右2枚の合わせと羽根部の接合。そしてもっとも難加工となったのが首部の絞り込み。切れが生じる限界値とのたたかいだったためだ。胴体部表面にランダムに細かくついている打痕も、金属質のなかに生命体らしい温かみを感じさせる役割を果たしている。足は銅板を巻いて形状にしたもの。各部の接合はアルゴン溶接に依っている。水かきの部分には、溶接の肉盛りで筋をつくりだしているのも工夫のひとつ。


「機械加工中心の日常業務から離れ、夜一人で手づくりの製品加工に取り組んだことは、仕事の原点を再確認できたという点で大きな意義がありました。材質の特性を肌で感じることができ、ここをこうすると歪みがでる、曲げの出しかたなど、機械加工ではわからなかったことが、ああこういうことかと納得できるのです。その経験がブレーキ曲げの条件設定などにもフィードバックでき、ずいぶんと役立っています。今回の受賞製品を通して、機械加工でもモノづくりの"味"を出せるようになった、ということも収穫のひとつです」(鈴木社長)


 業務終了後の時間を割いて、製作には3カ月くらいを要したという。最後に「納期のない仕事もいいものですね」と笑って話を締めくくっていただいた。

 


■鈴木製作所
本 社

千葉県柏市若柴5-34
TEL 0471-69-4400

創業 1977(昭和52)年
代 表 者 鈴木 良一
社 員 数 3名
事業内容 理化学機器、鉄道(新幹線車体の灯体)、液晶製造ラインのカバー等、各種精密板金加工

鈴木 良一社長