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第15回優秀板金製品技能フェア優秀製品
溶接を主体とする組立品の部・銅賞


『保温投入口(二重管)』
丸光機械工業有限会社(福島県いわき市)

(写真1) 食品機械に取り付けるダクト。流体を保温させるために分岐点を二重管にしている。実物の5分の1に縮小して製作したミニチュア版

 

 


(写真2)
15点の部材によって構成。平板をレーザー加工機でカッティングし、SPH-60Cで管状にした。ロール曲げの型はウレタン製

光機械工業の社屋は金属加工工場というよりも、金属加工工房のたたずまいである。田園風景のなかにさりげなく建つ。社名を示す看板もない。しかし工場内に入るとレーザー加工機をはじめ最新鋭の板金加工機械がぎっしり。液晶EL、転写ドラム、シリコンウエハーに関連する機器ならびに原子力関連などの板金・製缶部品を製作する。時代をリードする付加価値の高い部材が製作の多くを占める。

 「"変なもの"が得意。付加価値があって、小ロットのものを受注のターゲットにしています」と佐藤昌己社長。"変なもの"とはいい換えれば"難加工品"のこと。図面の検討から顧客設計者へのフィードバック、製作工程の分析、設定までVA、VEを駆使する工法は大手企業顔負けのもの。22年の企業実績から身につけたものだ。場合によっては自費でモックアップを製作する徹底ぶりである。日本のモノづくりを支える中小製造業の強さを実感として感じることができる。



(写真3)
(写真4)

(写真5)
写真3〜5
  TIG溶接による溶接線は約3m。難度の高かったのが内管の円周溶接
 
賞製品は食品機械に取り付けるダクト。流体を保温させるために分岐点を二重管にしているのがポイント。優秀板金製品技能フェアのために実物の5分の1に縮小して製作したミニチュア版だ。材質はSUS304。板厚は内管が2.0mm、分岐点を包む外管が1.5 mm。すべて平板をレーザー加工機でカッティングし、ユニバーサルブレーキSPH-60Cで管状にした。ロール曲げの型はウレタン製で自作のものである。15点の部材によって構成されている。

 「レーザー加工機でカッティングした15枚のブランク材を正確に曲げ、内・外周を溶接しながら積木細工のように組み上げていくのですが、内管の溶接、そして入口・出口の取り合いが特に難しかった。板厚の違いも影響して、累積誤差があるとエビ胴が所定の角度より、"おじぎ"をしてしまうからです。材料の特性を知り、レーザー加工の誤差と溶接の"つまり代"を考慮した展開、要求する曲げ形状をスムーズに実現できる切断精度、矯正治具なしに溶接が行える曲げ精度の実現と、常に前後の工程を考えながら、工程トータルで精度をつくり上げていくことが必要です」(製作を担当した高萩一樹専務)

 製品寸法はダクトを立てた状態にすると、高さ385mm、二重管部の直径140mm、二重管に取り付けられたフランジの高さを入れると外径は195mm。展開も含め加工時間は12時間。

萩専務は加工のポイントについてさらに次のように語っている。
「エビ胴にするため突き合わせ部(端面)に関して、レーザー加工によって0.2mm程度の出入り(加工条件によってバラツキはある)が生じてしまった場合、これも補正をかけて百分台の精度に持っていっている。機械の持つクセを考慮に入れてデータを作成することも大事です。"つまり代"の算定も溶接作業をする人によってその数値が変わってきますから、自動プロの補正値だけでなく、独自のものを出しています。幅広い板厚に対応できること、気密性の高い溶接ができることからTIGに統一していますが、個々の持つ技術・技能を掌握して、会社として蓄積し積み重ねていくことが大事だと考えています。耐圧、ペイントチェックも万全です」(高萩専務)

 加工範囲は0.1〜16mm。"万能工"のシステムを採り、難加工品でも短納期に対応できる汎用度の高い生産システムを構築しているのも受注力を高める大きな要因となっている。




■丸光機械工業有限会社
本 社

福島県いわき市平上神谷字石ノ町9-1
TEL 0246-34-4353

創業 1970(昭和45)年
設立 1970(昭和45)年9月
代 表 者 佐藤 昌己
社 員 数 14名
事業内容 電子産業機器、液晶製造装置、食品機器等の製缶・板金加工
E-mail mrmt-kikai@smile.ocn.ne.jp

佐藤昌己社長(右)と製作を担当した高萩一樹専務