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第16回優秀板金製品技能フェア優秀製品
中央職業能力開発協会会長賞/溶接を主体とする
組立品の部・金賞


『粉体空気輸送用二方切換弁』
ツカサ工業株式会社(愛知県半田市)

(写真1) 微粉末を高圧エアに乗せて輸送する際に使用する配管の切換装置

 

 


(写真2)
シリンダーハンドルを取り付けた状態。 ”パウチェンジミドル”の商品名で販売

槽するサイロやタンクなどへ微粉末を高圧エアに乗せて輸送する際に使用する配管の切換装置である。輸送経路を二方向に切り換える弁機構を内部に持つ。食品、薬品、化学からエレクトロニクス、環境関連まで多様な業種で稼働する粉体プラントに組み込まれるものだ。粉体の総合エンジニアリング企業であるツカサ工業が"パウチェンジミドル"の商品名で開発(写真2)、シリンダーハンドルを上下すると、内部のフラップ弁が動いて経路を切り換える機構(写真3〜4)をとる。鋳物製からステンレス薄板構造に転換し8割以上の軽量化を実現した。

賞の対象となったのはシリンダーハンドルを外した本体部(写真1)。9mm厚のフランジ3枚と板厚1.5mmのステンレス薄板4部材、機械加工が施された軸受部で構成する。材質はともにステンレスSUS304。

 そして、製品仕様として最も重視されるのがサニタリー性とシール性。微粉末が滞留・付着または粉漏れしないで通過する曲線形状と滑らかな内面仕上げが必要となる。独特の半円形状をつくり出しているが最適形状の創出も同社のノウハウだ。



(図1)フラップ弁先端のシール構造
フラップ弁のステンレス板が本体にまず接触して、シール材に負担をかけずに高シール性を保持する機構となっている。高精度なビーディング形状が必要となる。


(写真3) 

(写真4)
写真3〜4 シリンダーハンドルを上下すると、内部のフラップ弁が動いて経路を切り換える


(写真5)
曲げ加工を施した本体片面の部材


(写真6)
入口部は絞り出し加工で一体構造にした
(写真7) 板厚の異なる接合部は、クリアランスを最小にして裏肉を出さずに隅肉溶接
 
 その実現のための第一のポイントとなるのが本体の展開。写真2に溶接線を示してあるが、製品を縦割りするように左右2部材、軸受部下の2部材、計4部材で構成する手法をとった。写真5が曲げ加工を施した片面の部材であるが、ここでポイントとなるのがフラップ弁先端のシール材を受けて気密性を保持する役割を持つビーディング部(図1)。ビーディング加工によって発生する、板の伸び縮みまで読んだ精緻な展開が不可欠となるためだ。当然、R曲げにも大きく影響する。溝幅が一定ではないビーディングが入ったブランク曲げだけに難加工となる。曲げ精度が製品精度を決める大きなファクターとなるだけにウレタンのゴム材を使い、スキルと高度な治具の工夫で要求された精度を維持させている。微粉末をスムーズに流入させるために、入口部を偏心の絞り出し加工にした(写真5〜6)のも工夫のひとつ。別途溶接構造にしていた入口部を一体構造にし、工数削減と円滑な内面を持つサニタリー性、美観性の確保をも実現する。

合部の溶接精度や歪みがシール性、サニタリー性に直接影響するだけに、創業者の航空機製造技術を基とした非鉄金属の溶接、精密板金の加工工場としてスタートした同社が培った高度の溶接技術が製品加工のベースとなっている。板厚が異なる本体とフランジ部の接合は、接合部のクリアランスが最小限になるよう前加工で十分に精度をつめたうえで、裏肉を出さずに隅肉溶接し(写真7)、本体の突き合わせ溶接も裏肉が均一に盛られるよう細かい工夫が随所になされた。後処理は行っていない。

「突き合わせ溶接は開先のとり方と、仮付けで最終精度を出すことがポイント。板厚が異なる溶接は歪みや捩れが生じやすいだけに、溶け込みが均等にいくようにトーチの角度がポイントになりますが、一番大事なのは加工条件ごとの溶接の電流、速度、姿勢に関する基本を忠実に守ること。最後はそこにいきつきます」(山本俊晴生産部長)

 最終工程でのバフ研磨を省くため、本体は#400研磨材を使用する。いうまでもなく各工程において細心の注意をはらってキズ対策が行われた。

 百分台の精度を追求するブランクとビーディング加工、高度のR曲げ、歪みを出さない卓越した溶接の統合技術によって生み出された製品であるが、複合技能士、一級技能士を工場内に20数名擁する陣容が難度の高い加工を普遍的に行う背景にあることもまた間違いない。



■ツカサ工業株式会社
本 社

愛知県半田市中午町178
TEL.0569-22-3111

創業 1946(昭和21)年1月
設立 1969(昭和44)年10月
代 表 者 加藤 文雄
資本金 5000万円
社 員 数 125名
事業内容 粉体関連機器およびプラント、無公害廃水処理システム、電溶ケーブル巻取機
URL http://www.tsukasa-ind.co.jp

山本俊晴生産部長