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第16回優秀板金製品技能フェア優秀製品
機械的結合を主体とする組立品の部・金賞


『RG-80 1/10スケール』
有限会社石田鉄工(川崎市多摩区)

(写真1) プレスブレーキを忠実に1/10に縮小したミニチュア。形状だけでなく、動きも再現している

 

 


(写真2)
中間板も忠実に再現。金型の脱着も可能だ

社で稼働するプレスブレーキを忠実に1/10に縮小したミニチュアである。ミニチュア(miniature)とは精密に描かれた細密画、微細画の意を語源としているが、写真の受賞製品はまさに精細にして秀麗、工芸品の趣をさえ有する。別のいい方をすれば、板金加工として実に“きれいにまとまった”秀作ということになる。

 板金加工は工程を踏みながら、前後工程の相関性と補完性を考え、各部材をまとめ上げる統合技術といわれており、最適工法で所期の形状をつくり上げるためには創造性が重要な要素となる。創造性こそ板金加工の原点であり、そこに技能・技術を付加することによって付加価値の高い板金加工製品を創出することになるが、このような板金加工としての原点・特性を高度に具現化したのが今回の受賞製品である。



(写真3)

(写真4)
バックゲージも可動する
 

(写真5)
バーペダルを手で押すと下部テーブルが上昇し、加工もできる


 
ーザー加工技術を駆使して製品化されている。外形抜き、スリット、細穴、マーキング、文字抜きなどブランク加工はすべてレーザー加工機Quattroによって行った。レーザー切断技術のノウハウを駆使した微細切断である。素材はSUS304、板厚は躯体部の6.0mmから本体正面カバーにつかった0.5mmまでの範囲。計110点の部材で構成されている。

 ステンレスの素材感を活かし、秀麗な外観を維持するために、ビス、ボルトを多用する構造体をとった。溶接によるひずみ、打痕をさけるためだ。そして、自社で稼働するRG-80を実測し、細部にわたって1/10のスケールで縮小・再現しているのが大きな特徴である。それは、構造、機構(機械の動き)の両面にわたっており、機械特有の機能美を再現する有効な要因ともなった。

 機械フロント上部に貼られている能力表もマーキングによって忠実に再現されており、フロント上部とそれを支える背後の躯体との結合も、本機と同じ機械的な手法をとった。フロントにビス止めされたカバーを外せば、内部が確認でき、フロントを取り外すこともできる。本機とまったく同じである。中間板も同数を配置し、金型の装着、取り外しも可能だ。

 秀逸なのはバーペダルを手で押せば、てこの原理で下部テーブルが上昇して、実際に加工が行えること。上下型の芯出しも調整済みだ。バックゲージの可動も自在にできる。もちろんペンダントタイプの操作ボックスも左右に振る。心にくいまでの再現性である。

田鉄工は、大手電機メーカーの試作部門で技術を磨いた石田光夫社長が独立して創業。28年の社歴を有する。そして実作を担当したのが石田晃一専務だ。

  「受賞製品の製作を通して、改めてレーザー加工の可能性を発見しました。この経験を活かして、さらに単品で難加工の製品加工に特化して付加価値を上げていきたい」と石田専務。1階と地下に作業スペースをもつ都市型工場だが、若き感性が板金加工の新たな世界を切り開こうとしている。




■有限会社石田鉄工
本 社

川崎市多摩区堰3-9-3
TEL.044-844-2288

創業 1975(昭和50)年
設立 1988(昭和63)年
代 表 者 石田 光夫
社 員 数 3名
事業内容 レーザー加工、精密板金加工、鉄骨溶接加工
URL http://www.ishida-tk.com

石田光夫社長(左)と石田晃一専務