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第16回優秀板金製品技能フェア優秀製品
日刊工業新聞社賞/板金加工部品の部・金賞


『ベルトカバー』
株式会社田名部製作所(福岡県山門郡)

(写真1) 的確な展開、高精度切断のレーザー加工、さらに高度技能の曲げ、溶接の積み重ねによって製品化。形状はシンプルだが難加工品だ。

 

 


(写真2)

(写真3)
きれいな仕上がりを見せている。角部は全周にわたって10Rの角度がついている。

昨年の第14回優秀板金製品技能フェアに続いての受賞となった。ともに板金加工部品の部で前回が銀賞、今回は金賞。田名部製作所はホームページに自社を"水のように、紙細工のように金属を自在に繰り、進化し続ける技術集団"と位置づけるが、今回の受賞製品はその技術集団が保有する高度技術から生み出されたものだ。異形状の難加工に常に果敢に挑戦する田名部製作所の習作である。日常的に加工する製品の寸法仕様を変えてフェア出品用に製作したもの。素材は板厚1.5mmのSUS304 である。

状は一見シンプルだが実態は難加工品だ。「的確な展開、高度な曲げ技術とレベルの高い溶接技術がないとこのようには仕上がらない。相当な技量が必要」と工場を統括する田名部 淳さんは強調する。

 第一のポイントは展開にある。平板から絞り形状をつくるためには立ち上げ部に切り込みを入れる必要がある。Rの円周が大きい場合はVに切り込めばいいが、受賞製品の両端のように円周が小さくRが一律でなくなると、コーナー部に大きな切り込みを入れて別途部材を組み込まなければならない。切り込み、部材をはめ込む位置の選定が重要となるが、展開作業を担当しているのが1級板金技能士の資格を持つ大藪達也さん。「高度の技能を持つ人がコンピューターを使いこなすとすごい戦力になる」と田名部さんも全幅の信頼を寄せる。加工ノウハウを習得し、機械の特性を熟知した大藪さんの展開は的確である。

 外周抜きと切り込み、スリット、穴抜きはすべて形状切断に高い自由度を持つレーザー加工。そしてプレスブレーキによる曲げはすべて標準型をつかっての加工となった。担当は2級板金技能士の資格を持つ富崎真二さん。コーナー部が全周にわたって10Rの角度を有しているうえに、要求された曲げ精度をクリアしないと面合わせのときに接合面に隙間ができることになる。本体各部とはさみ込む部材をすべて同一角度にしなければならない。ステンレスの曲げはバラツキが多く、ごまかしがきかないだけに機械機能に加えて高度の技能を要することがわかる。はさみ込む部材は切り込みを入れて複合曲げとなっている(写真5)ことに注目したい。複雑な形状箇所は別部材にして逃げているわけだ。

 溶接を担当したのはTIG溶接に8年の経験を有する川野和義さん。溶接が最終形状を決するだけにひずみ対策には細心の神経をつかった。

 ちなみに、2箇所のカップリングはNCTの成形型で2段絞りしたものだ。



(写真4)
裏側に残る溶接線に注目。切り込みと部材の取り付け箇所がわかる。

(写真5)
厳しい角度を持つコーナーには、別途部材をはめ込む。難度の高い複合曲げだ。
 
「高度の機能を持つ機械と高度技能の融合があって実現した製品加工と考えています。的確な展開、高精度切断のレーザー加工、さらに高度技能の曲げ、溶接を積み重ねての成果です。きれいに仕上がったことが評価されたものと考えています。若手社員を中心に製作したものだけに喜びもひとしおです」と田名部さん。超高速NCTのEM2510NT、フライングオプティクスレーザー加工機FO-3015NT、ネットワーク対応の下降式ベンダーHDS‐1303NTと最新鋭の機械システムで加工現場をラインアップする田名部製作所であるが、ベースとなる社員の技能習得と蓄積にも力を入れる。デジタル、メカ、技能の融合化を推進して付加価値の高い難加工への対応を強化する。



■株式会社田名部製作所
本 社

福岡県山門郡瀬高町大字下庄544-5
TEL 0944-63-3179

創業 1955(昭和30)年
設立 1971(昭和46)年
代 表 者 田名部 秀世
資本金 1000万円
社 員 数 23名
事業内容 空調機器部品およびキャビネット・農機具部品・乾燥機部品・ノリ機械部品・自動車部品その他のプレスおよび製缶(鉄・ステンレス・アルミ)、スポット、タッピング、溶接、機械加工、組立、プレス金型、その他全般
URL http://www.tanabe-mt.co.jp

川野和義さん(左)と富崎真二さん

田名部 淳課長