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第16回優秀板金製品技能フェア優秀製品
溶接を主体とする組立品の部・銀賞


『洗浄機用バスケット』
株式会社セイワ工業(宮城県遠田郡)

(写真1) 高度の溶接技術を駆使した、ひずみのない秀麗な形状、外観が評価されての受賞となった。
 
 


(写真2)

(写真3)
正確で精密なビードに注目

「機械加工が高度に平準化するなかで、他社との差別化のポイントを溶接に置いています」と語るのはセイワ工業の佐々木清士社長。創業時からの信念である。自ら溶接の“ウデ”を磨くことに腐心し、社内に溶接技能を定着させてきた。社員はできるだけ溶接の未経験者を採用し、当初はマンツーマンで、その後は自らの“経験値”をつかみとるまで徹底して現場で溶接実務を継続させ、習熟するまでアシストする手法をとる。佐々木社長自身の経験から、溶接は“体で覚える”ことのファクターが大きいとのおもいが強いからだ。

 溶接技能の高度化に力を入れる企業姿勢は13名の社員のうち5名を溶接・組立に割いていることでもわかる。製造現場を統括する佐々木浩視取締役工場長も「会社の総合力が製品に出るものです。それだけに製品の品質に直接影響する溶接には力を入れている。目視したときに、“ああキレイだな”とおもう製品は精度も品質もいいものです。板金はとくに見た目をよくしなければならない。今後はその傾向がより強まっていくのではないでしょうか」と語る。溶接を重視する所以である。

真2、3に示した受賞製品のビードを見ていただきたい。写真2はスクリューシャフトとバスケット本体の接合部、写真3は本体の胴部とサイドパネルの接合部だが、TIG溶接によるビード幅、ピッチとも申し分ない。条件設定を厳密に行ったロボットによる精密溶接とくらべても遜色はなく、むしろ手による運行でここまで正確かつ精密なビードが描けるのかという驚きのほうが先行する。経験8年、35歳の溶接技能者によるものである。

 このビードの形状がセイワ工業の技術力の高さを如実に物語っており、受賞製品のすべてをあらわしている。総合精度は±0.3mmだ。


(写真4)
バスケット本体の胴部は1枚板でできている

(写真5)
バスケット内のスクリューシャフト
 
体の骨組みを構成するのは板厚2.0mmのSUS304。レーザー加工機で切り出したものだ。切断精度は1/100mm以内におさめるが、これが蓋と本体の間にあそびを持たせ、スムーズに開閉できる要因ともなっている。バスケット本体の胴部は1枚板の曲げ構造。ポイントは骨組みとパンチングメタルを同一精度で曲げ、修正なしにスポット溶接することにある。そのためにパンチングメタルの曲げは、パンチングメタルを板材の間にはさみ治具を使っての加工となった。治具の数はその企業が保有する技術力のバロメーターといわれるが、セイワ工業の曲げ、溶接高度化に対する加工上の工夫、治具の工夫は実に多い。コストダウン、時短対応にも大きな効果を発揮する。因みにパンチングメタルの板厚は1.0mmである。

 バスケット内のスクリューシャフトのうちシャフト部はφ15mmのパイプを使い、スクリューはレーザー加工でブランク材から渦状にカッティングして引き伸ばし、シャフトに巻きつかせる手法をとった。両端にカップリングをつけているが、これも平板を巻いて円錐状にし溶接接合したものである。

「私どもは創業時からステンレスの加工を主体にしてきており、ステンレスに対する加工ノウハウの蓄積が今回の受賞の伏線になっているようにおもいます。ひずみのない秀麗な製品形状・外観が評価されたのではないでしょうか」(佐々木社長)

 溶接構造体が見直され、増加傾向にあるなかでセイワ工業の溶接に対する取り組みは改めて注目を集めそうである。



■株式会社セイワ工業
本 社

宮城県遠田郡涌谷町字六軒町裏198-1
TEL 0229-42-2527

創業 1982(昭和57)年
設立 1988(昭和63)年
代 表 者 佐々木 清士
資本金 1000万円
社 員 数 13名
事業内容 通信機器、測定機器、医療機器、生産設備装置全般の板金加工、筐体板金加工

佐々木 清士社長   佐々木 浩視取締役工場長