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第17回優秀板金製品技能フェア優秀製品
中央職業能力開発協会会長賞・溶接を主体とする組立品の部金賞


『ガスタービンの燃焼器』
株式会社齋藤工業(愛知県知多郡)

(写真1) ニッケル超合金の高度な溶接技術が評価されての受賞となった。
 
ールトヨタが蓄積してきたタービン技術を集大成して誕生した『マイクロガスタービンコージェネレーションシステム用エンジン』(図1参照)の燃焼器である。燃料噴射ノズル部と燃焼器本体、点火プラグ取り付け口によって構成されている。

 マイクロガスタービンシステムはタービンの動力によって発電機を駆動、発電するとともに排熱を回収して冷暖房や給湯に利用する総合効率の高いシステムである。大幅な省エネ化、環境保全、効率的で安定したエネルギー供給を実現する次世代型のエネルギーシステムでもある。

(写真2)高度な加工技術により、タービン回転の高速耐久性と燃焼ガス混合の高効率化を実現した
焼器を構成する部材の材質は、噴射ノズル部がSUS 304。そして本体板金部が高い耐熱性能を持つニッケル超合金(INCO alloy HX)。

 まず噴射ノズル部の加工は同時5軸マシニングセンターでスワラーの削り出しを行う。高速回転に耐え、燃焼ガス混合の高効率化を図るために一体削り出しとなった。複雑形状、傾斜面加工、多面体ワーク等の自由曲面加工に威力を発揮する同時5軸加工機の機能ゆえに可能となったものだ。

 板金本体部は、レーザー加工機で外形切断を行い、ロール成形時にシュリンク工程(シュリンク率1%を付加した展開長)を行うことによって高い真円度を確保した。接合条件が一定となり、製品精度±0.05mmを実現する要因となっている。真円度の確保は、焼結器内の火が偏らない燃焼効率の良い構造体を得るために不可欠の要件でもある。噴射ノズル部と本体板金部を結ぶカップリングは油圧プレスによる絞り成形だ。

 本製品のポイントのひとつが溶接。ニッケル合金は融点が高いだけに溶接が非常に難加工となるためだ。今回の受賞もニッケル合金の高度な溶接技術が評価されたもの。齋藤工業ではモーター・スポーツエンジンの製作等でニッケル合金の接合技術には高い実績を持つ。TIG溶接機自体もインバーター制御に改造し自社開発も行う。ノンスパッタが実現し、技量差を克服して均一な溶接を実現するシステムを実現させている。インバータースポットで点付け溶接し、TIG溶接で全周溶接を行った。

 “炉心温度1500℃に耐える燃焼器構造、10000時間以上の耐久寿命”を実現した耐久性能、マイクロガスタービンシステムが有するCO2の発生量削減、大気汚染物質の大幅削減等の高い環境保全機能も齋藤工業の製造技術が下支えして実現したものだ。

(写真3)高い真円度を確保し、燃焼効率の良い構造体となっている
回の受賞製品は、機械加工、板金加工、溶接技術の総合力に加えて、アルミ合金、チタン、マグネシウム、セラミックスなど各種素材を知り尽くした齋藤清隆社長が保有する技術ノウハウの結晶でもある。その原点は、昭和50年代のレーシングカー(シャーシ、フレーム、サスペンション)の製作にあり、1998年にスピードスケートの清水宏保選手が使用するシューズのスラップフレーム、最近では全マグネシウム合金製自転車、14インチサイズでは世界最小の折りたたみ自転車の製作等でも話題を呼んでいる。



■株式会社齋藤工業
本  社

愛知県知多郡武豊町字沢田新田89-5
TEL 0569-73-4488

設立 1978(昭和53)年10月
代 表 者 齋藤 清隆
従業員数 12名
事業内容 板金加工、各種溶接、機械加工、アルミ熱処理加工、レーザー溶接、マグネシウム合金・チタン合金の板金溶接
URL http://www.aichi-iic.or.jp/co/a8-saito-kogyo/


齋藤清隆社長