第20回優秀板金製品技能フェア優秀製品『カバー』

技を究める

		第20回優秀板金製品技能フェア優秀製品厚生労働大臣賞板金加工部品の部・金賞『カバー』株式会社田名部製作所

田名部淳社長と吉田和喜主任、富﨑真二主任、内田亮二氏（写真左から）

田名部社長

プレス加工に匹敵する板金製品

　製品は農機具カバーをヒントにデザインを変更し、つくり直したものです。その際わざと多様なＲ形状とし、難易度の高い製品としました。また「板金加工でどれだけプレス形状に近づけられるか」、というテーマをもって取り組んだ製品でもあります。

　製作担当者は経験12年のＮＣＴ板金作業１級技能士です。当社は毎年フェアに参加していますが、技能検定１級を基準に担当者を指名します。指名にあたっては、「賞は狙わなくていい。とにかく過去の出品製品と違う形状を自分で考え、より難しいものに挑戦しなさい」と言っています。評価は結果ではなく、過程の頑張りにあります。

　今回の特長は側面部におけるＺ曲げとＲ面のつなぎです。これまでになかった形状をつくってくれました。またコーナー部分は別途部材をはめ込み、形状を整えています。あとひずみ対策としては側面部に穴をあけ、溶接が終わるまですべてネジ留めし、ひずみを中に抑え込みました。さらに上部には絞り加工による開口部を設け、ひずみを逃し、きれいな外観をつくりあげています。その結果、プレス加工に匹敵する板金製品ができました。

Ｚ曲げとＲ面をつなげた加工ながら、とてもきれいな仕上がりとなっている。コーナー部分（点線）は別途部材をはめ込み成形。

板金の部で原点追求

　新たにデザインを考え、展開し、また１回では難しいコーナー部分の製作など、担当者は休日返上で取り組んでいました。そうした苦労が新たな技能習得につながるのです。さらにコストや納期など日常業務には必ずついてまわる制約がないので、社員は自由に楽しく、つくっています。

　当然その姿は周囲も見ていて、特に後輩は「いずれ自分も…」という気持ちになってきます。そのためにはまず１級技能士が目標となるので、資格取得にもつながります。フェアは格好の社員教育の場です。これからも原点追求という意味で、〝板金加工部品の部〟にこだわって出品していきます。

製品のポイント	角をなくした多様なR形状
		接合個所も別途部材を用いR形状に

	プレスに近づいた板金加工
		展開から溶接に至るまでの全体精度の高さ

製品メモ	寸　　法	：	W440×H440mm
	要求精度	：	±0.5mm
	加工時間	：	600分/個
	生産形態	：	試作品
	材　　質	：	SUS304（BA）
	板　　厚	：	1.5mm
	部品点数	：	7点

■会社概要
所在地	福岡県みやま市瀬高町下庄544-5 TEL. 0944-63-3179
創　　業	1955（昭和30）年
代表者	田名部淳
社員数	20名
事業内容	空調機器部品、キャビネット、農機具部品、のり機械部品等の精密板金加工
URL	http://www.tanabe-mt.co.jp

「自由につくれる時間がもらえ、やる気が出ました。そして楽しみながらつくることができました」と吉田主任。