IT活用インタビュー
 
インターネットは
素晴らしく便利な道具



株式会社アールテック・リジョウ
住所   広島県広島市佐伯区五日市7-9-32
TEL   082-921-2292
創業   昭和24年1月
従業員数   24名
代表取締役   石本邦雄氏
URL   http://www.r-tec.co.jp


▲自社製品のバーベキューコンロ
 創業は昭和24年に現代表取締役の石本氏の父親、石本和吉氏が電気自動捲時報時計の製造を始めたのが始まり。当事は戦後の混乱期、焼け焦げた古道具を使っていたが、その画期的な商品が時代のニーズに合致、受注が拡大した。昭和32年には生産設備の拡充及び組織改革に伴い、株式会社鯉城時計製作所を設立、社名の鯉城とは、近くの姫路城が白鷺城と呼ばれているのに対して広島城がその昔から鯉城と呼ばれていたことからで、罹災した郷土を愛する心から鯉城時計と名づけた。昭和40年には板金設備としてシャーとプレスブレーキの1号機を、53年にはNC タレットパンチプレスPEGA-344を導入し正確で精度のよいモノづくりを目指していく。

 一番最初の「あ」

 その後社名変更を行い(株) アールテック・リジョウと改め現在に至っている。この社名命名にも曰くがある。「鯉城時計の「リジョウ」とした場合、例えば何かの名簿を作成する場合、又は電話帳に載った場合どうしても「あいうえお」順となり、リジョウの「り」ではずっとずっと後ろになってしまう。何とか「あいうえお」順で最初の方に載って目立つことが出来ないか、と考え「リジョウ」の前に「リジョウ」の頭文字「R」、いわゆる「アール」を先頭に持ってくればどんな時にも一番先頭に乗せてもらえて宣伝効果が高いと「アールテック・リジョウ」と命名しました」、と創業から印象的な社名命名までを石本邦雄常務は語る。

 これまでに、多くの分野と異業種交流して、製品を開発・販売というルートに乗せた実績を持つ石本常務。昭和60年には県内の同業者に呼びかけ、当初16社で広島板金工業会を結成、初代の会長として製造業者の意識の改革と受注を活性化させる目的で異業種交流やジョブマッチングなどを推奨してきた。1人では発言力も弱い。しかし、組織として多勢の言葉には力を持つ。会長就任時代は同業者の1人ひとりを訪問し、会への参加を呼びかけてきた功労者。


 鯉城時計は優しさの結晶
  「その昔、自動時報時計を開発する以前は、早朝やお昼の合図はサイレンで知らせていた様です。いつもその音を聞くたびに先代が『何処のどなたか知らないが、まだ人が寝ている時にご苦労様なことだ』と述懐していました。また、この頃の小さな企業や商店は朝の始業時や午後の始業時には公の合図がないため、親方の「咳払い」が合図になっていた様です。それらの様子を見聞きしていた先代が、朝早く起きて時を知らせることや、お昼、始業・就業の合図などを、なんとか自動化してあげられないか、と工夫に工夫を重ね時報時計が完成したのです。目的が、これでお金儲けをしたい、ではなく、なんとか楽にさせてあげたい、という気持ちが後押しして、試行錯誤の末、形になったのだと思います。この先代の『人を気遣う心、困っている人を捨て置けない心』と、何にでもこだわる熱い血が、私にも脈々と流れているのでしょうか。私もひと様が困っていること、もっと便利になったらなぁ、というひと様の不便を解消できる道具・システムを開発してきました」。先代の開発に至った経緯を話す。その先代も103歳という長寿を全うした。

 開発のセオリー

▲アイデアと基本技術で具現化を図る開発室
  「いくら私をアイデアマンだといって評価していただいても、商品の構想が湯水の如く涌いてくるわけではなく、新商品開発のシーズは「困っている人」がいて、それをなんとか簡単に、便利にしてあげたい、という点がシーズです。ひと様の、こうして欲しい、というニーズが開発のシーズになっています。次にこのテーマを解決するにはどのようなテクノロジーとスキルが必要なのか、コーディネートをしなければならなりません」。

 ヒューマンネットワーク

▲導入したネットワークベンダーHDS-8025NT、床は5Sが行き届いている

▲生みの苦しみ。繰り返しテストされる。
  「それを可能にしてくれるのがヒューマンネットワークです。私は今年で73歳になりますが、お陰さまでコンピューターのキーボードには全く抵抗が無く、仕事が終了してから、来たメールにすべて目を通し、返事を書く作業で夜中になってしまう程です。私は昔から県の工業技術センター、市の中小企業支援センター、産業振興公社等々に出入りさせてもらったり、他に異業種交流会に3 つばかり参加していて、いろいろな方と交流をさせていただいています。そんな中で「あいつの所へ行けばいろいろ教えてくれるよ、とか回答を引き出してくれるかも知れないよ」とか言われ、県の広報には『駆け込み寺』なんて書かれてしまうようなこともありました。それからというものはいろいろな方からメールをいただき、アポイントが入り毎晩メールへの対応や毎日1時間おきの来客予定に振り回されています。しかし、その解決策の中からかなり多くの新商品が生まれていることも事実で、昨年の2 月にはブログ「リジョウ日記」なるものまで開設してしまいました。正直なところ、このブログについては、どちらかというと仕事への入口というよりも毎日のストレスの捌け口と言うべきかも知れません。しかし、このブログを見た知らない方から「1年に1回のお祭りに使われる品物を妻と2人で、手作りで造っています。もっと簡単に出来る方法はありませんか」の問い合わせがあり、お話を聞いて現状を分析し、便利なように半自動の仕組みを格安で作成して納めたこともあります。私の場合、「困っている」ことの解決項目が新商品の種になります。そして見つけたテーマを解決するために、どんなテクノロジーやスキルが必要かを見極め、自社に無いものは何処の誰と組めば良いか。これに対しては「インターネット」は素晴らしく便利な道具です。ヒューマンネットワークを組みやすい道具です」。

 交流会を通じ信頼できる人と出会える
  「私が参加している3 つの異業種交流会に集まる人たちは保守精神の塊のような方々で、何かを分けたら「残ったものを自分が取る」というような奥ゆかしい仲間が集まって来て、とっても良いネットワークが出来てきています。そんな中から「この人となら組めるかも」という人が現れて「仕事もノウハウも経営資源も人の交流」も分かち合える仲間が増えてきています。そんな関係が出来れば、ノウハウや経営資源などは、自社に無くても相手にあるものには二重投資はしない、という合理的、かつ協力的なヒューマンネットワークとなる訳です。ですから、テーマが見つかったら「どのネットワークで行こうか?」、これが新商品創りのコーディネートの役割です。自社製品を持つということは、機械に向かって考えていても、又、待っていてもテーマは自分からは来ないという事です。ましてや机上で考えても出来ないでしょう。今、当社は生産量の50%が自社製品です。その上にOEM商品の20%を加えると70%強の自社ブランドということになります」。平成15年に全国地場産大賞でバーベキューセットが奨励賞を、平成17年には全国優秀板金製品技能フェアでブロック棚が技能賞、同年、ひろしまグッドデザイン奨励賞を受けた進化系七輪等がある。

 集中してモノづくり

▲組立進行中の自社製品

▲代表取締役常務 石本邦雄氏
 シートメタルの合理的な製作を目的に山県郡大朝町に( 株) コアオオアサを設立、アマダの最新設備EM-2510NT × 2台、FBD-8025NT、VIPROSZ-358PDC を導入し24 時間稼動を実現、生産を伸ばしている。

 また、「自分達が心を込めて創った商品は、自分達の手でお客様に!」のコンセプトで商品の販売とメンテナンスを担う( 有) アールテック・サービスも設立してアールテックグループのブランド戦略も確立できました。新世紀の環境変化に伴い、顧客の価値観やニーズも多様化し、商品開発も高度化しています。得意技術を持った企業がネットワークを組み、そのスキルを結集することが重要です。アールテック・リジョウは培った企業資源を活かし、地域活性化のコアとなり、企業間のネットワークを深め、価値あるモノ創りを実現しようと考えます」。温和な笑顔で石本常務は語る。
 
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