IT活用インタビュー

2007/10
航空機座席部品・OA機器筐体
・原子力発電所保温関連の3本柱は健在



戸塚金属工業株式会社
代表取締役   追立 俊朗氏
住所   新潟県燕市小関1102-1
TEL   0256-63-6322
創業   昭和37年8月
従業員数   36名
事業内容   航空機用シート部品、鋼製家具部
品・OA 機器の筐体、電子部品の
試作、精密板金加工、金型製作、
塗装・組み立て精密板金加工、金
型製作、塗装・組み立て

 創業まで

▲戸塚金属工業株式会社ネットワーク構成図
 同社は先代社長が1962 年に横浜市戸塚区で研磨を主とする個人会社を設立、やがて大手スチール家具メーカーとの取引が開始される。そこへ結婚を機に入社したのが現社長の追立氏。

 「18年間、東芝総合研究所に勤務した私にとって この転職は驚きの連続でした。内側に入って製造現場を見回すと、私たちの常識から20〜 30 年遅れていると、率直に感じました。私は図面に関しては何とか読めますが、板金図面というと展開能力がないと難しい。また、発注元の図面の引き方もバラバラで統一されてなく、モノを製造するのに「製造指示書」も無ければ作るための「製造手順書」も無い。まして今まで作ったモノの「データ」もバラバラでファイルされておらず、生産管理も生産技術も低レベルという状態でした。

究極は働いている人たちが「3Kの代表」のように汗と油にまみれて奮闘している姿でした。今までモノづくりのルールに則ってやってきた自分には驚きと共に「これは何とかしなければ」という気持ちで、パソコン「ロータス123」を持ちこみ「受注と出荷と売上」を管理しようと考え生産管理のスタートを切りました」。追立社長は入社当時を振り返る。

 先代社長の夢、故郷に錦
  バブルが崩壊、9割依存していた大手スチール家具メーカーが地方へ統廃合され下請けの洗い直しをするという。当然、地元企業に仕事が回されてしまうだろうと危機感を覚え、1 社依存から脱却すべく営業にも力を入れるようになっていく。

 先代社長は新潟出身。横浜市戸塚で仕事をしながら、いつかは故郷で、の夢があり1988 年に現在地を購入し新潟工場として操業した。しかし、横浜と新潟と、分散していることの不都合を解消するために、戸塚区の本社工場を閉鎖し、従来の新工場を本社として機能させ、業務を集約して、一気通関の生産体制を構築した。

新潟工場立ち上げ時に請われ、都心を離れて参加したのが義弟である菅原常務。

 7 〜10万パーツ/月

▲AP100Alfaによる展開プログラム作業

▲ミクロジョイントバラシKSM2413

▲開発中の2次元検査機
  「幸運にもこの10 数年で定期的に受注のある航空機座席関連と新規に原子力発電所保温材関連のメーカーとの取引が始まり、現在は毎月のアイテム数が3,000 件、加工する部品数は7 万から10 万パーツとなってきました。こうなると、効率の良い生産管理で管理しなければ間に合わず市販の生産管理ソフトを導入しました。しかし、これだけの量の受注が毎日あると受注入力だけでも大変な工数です。1 日外に出て、戻ってみると図面が山のように溜まっており、それらを毎夜処理していかなければなりませんでした。そんな折に発注元から「発注方法をインターネット活用の“EDI”にする」との連絡が来ました。しかし、EDIになったところで大変な毎日には変わりなく、この機会に下記4項目をクリアする生産管理ソフトの入れ替えを検討し始めました。

1.EDI 受注を自動で受注入力できる

2. 受注データと一緒に図面管理ができる

3. 改定が多いため改定図面が管理できる

4. 工程管理(特に板金加工の)が

 できる結果、ケーブルソフトウェア社製の受注・出荷モジュール+Mが候補に残りました。「受注出荷モジュール+M」は4項目は勿論、板金製造の会社が欲しいと思う項目は全て網羅されていて最適との結論が出ました。導入と同時にEDI 情報の自動入力を主に受注管理、図面管理、出荷管理に活用しました」。

 導入に際して明確な要望を設定し厳しく吟味していった経緯を話す。

 平成16年に加茂工場設立
  本社工場が手狭になり加茂工場(加茂市)を建設、十数キロ離れた
同工場とはMDI のネットワークを介して生産管理の情報交換は瞬時にでき、最近では全図面の入力および改定図面の管理もできるようになった。今年の3 月からは現場端末を6台に増設して工程進捗管理をスタートした。

 理想的な作業手順書

▲曲げ工程
 「今までやりたい、やりたいと思いながら出来なかった《理想的な作業手順書》が出来るのではないかと期待は大きいです。《理想的な作業手順書》というのは、私が現場の作業者を見ていて時々“モノ探し”をしている姿を見かけるのですが、聞いてみると「M4 のタップを探している」と言って10 〜 20 分くらい探し「やはり見当たらないから買って下さい」。私にとっては要る物を購入するのは問題ないのですが、その2 人がかりで探した20 分というのは何であったか、と思うのです。《理想的な作業手順書》には作業の手順だけではなく、その時々で使用する工具、治具、測定具、その他共用工具等々の使用する種類、規格、収納場所、使用方法に至るまで手順書を見ればすぐに判る。そして今までは図面に“注記”と記載する「リピートのために記録しておきたいこと」等もこの手順書を見れば次に誰がやっても前回と同じものが出来るという手順書に仕上げてみたいということです。それが出来れば工具などの収納場所も一見にして判るし、使用後は必ず元の場所に戻すようになるだろうから、「作業手順書の中に“5S”まで入れる」というのをやってみようと考えています」。

 「加工機の高速化やシステム化が先に進んで行くのは勿論だが、このような作業方法や加工方法など、底辺の体質が元のままでは結果、使う人によって出るはずの増加利益も出なくなると思います。加工ノウハウが個人所有の情報になっている。単に加工方法といってもスキルの高い人と低い人とでは違う加工方法で加工した方が良い場合もあると思います。すなわち「作業手順書」=「作業の標準化」ということにしていきたいと考えています。今年の6 月からフォーマットやマスター作りに入り、マスターに関してはボトムアップで現場の担当者が「何をどのようにしたか」を直にパソコンに入れていく方法です。新規品の作業手順書は、最初は白紙でスタートして 工程が進む毎に埋まって行き、リピートが繰り返される毎に完成度が増すという仕組みです。現場の担当者が入力したものがマスターになる訳ですから都度、モノづくり以外の、キーボードで打ち込む作業を全員が忘れずにやれるか?と。それらのフォーマットは誰が決めて作成するのか?と二つの大きな問題があります。二つ目のマスターや指示書などのフォーマットの作成及びアプリケーションの変更作成に関してはプログラム経験のある社員が、「アマダさんの「インフラサポートサービス」は大変良いシステムです。自社のネットワークにアクシデントが発生した時に電話をすればインターネットを介してこちらのネットワークに入ってきて即座に原因を究明して解決してくれます。更に、今、チャレンジしている手順書のフォーマット等を作る上で相談したい時などケーブルソフト社に電話をすると、すぐにこちらに入ってきて共通した画面で一緒に考えて教えてくれ「インフラサポートサービス」は大変頼りになるようです」と具申してきた。 「問題1 つ目の、現場の担当者にパソコンを使わせる件では入力忘れが無いように指導していきたい。“生産管理は社員教育から”ということです」。

 検査結果を形状で残す仕組み

▲航空機座席の部品

▲現品表がついたブランク
 「私が2 〜 3 年前からチャレンジしていることのひとつに抜き工程の終了したブランク材の検査及び結果を形状データで残したい、ということがあります。今ある2次元測定器は普通プログラム室で作成した展開図と比較できるものばかりですが、それはそれでいいのですが本当に私がやりたいのは、抜いた後のブランク材そのものをデータ化して取り込み、リピートが発生した場合の抜き後に前回及び過去のデータと照らし合わせて即抜き工程や前工程にて工程検査が出来るものにしたいと考えています。それを今、ある業者と組んで開発中です。IT という観点から、現在のお得意様と自社とのネットワークも受注情報はEDI になっているとは言え、技術情報の図面に関してはほとんどが紙で郵送・
FAX で送られてくる状況で、まだまだこのハイテクの時代に沿ったIT 活用を推進していきたいと考えています」。

 追立社長と菅原常務は独自の検査結果を形状で残す仕組みの構築に意欲を燃やしている。
 
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