IT活用インタビュー
 
「SDDサポートサービス」導入でセキュリティ強化

AP100により展開図と立体姿図のデータを作成する

栄通信工業株式会社
代表取締役会長   今井 清之
代表取締役社長   今井 政彦
住所   長野県上伊那郡箕輪町大字中箕輪11526
TEL   0265-79-4828
創業   1960年
従業員数   52名
業種   空調機器、産業機械、コンピュータ関連商品
URL   http://www.sakae.co.jp/
     
会社経歴   1960年、下諏訪町にて設立。
1974年、箕輪町の現住所に箕輪工場開設。
1982年、今井清之氏が社長就任。1986年、今井政彦氏が入社。
1988年、塗装工場を開設し、(株)エスエス産業の商号で塗装業務に対応開始。
2000年にISO9001、2003年にISO14001
認証取得。
2007年6月、今井政彦現社長が就任。


主要設備
パンチ・レーザ複合マシンEML-3510NT+ASR-48M、パンチングマシン EM-2510NT、ベンディングマシン HDS-1303NT、HDS-8025NT×2台、FBDV-8025NT×2台、YAGレーザ溶接ロボットシステム YLR-1500V、2次元CAD/CAM AP100、曲げ加工データ作成全自動CAM Dr.ABE_Bend、
稼働サポートシステム vFactory


▲今井 清之会長

▲今井 政彦社長
 「データは命です」と今井社長は強調する。「昔からバックアップに関しては、真剣に考えてきました。 ASIS100PCL本体やハードディスク(HDD)が故障した場合、それまでに作成したすべての加工データが失われてしまいます。ハードウエアなら代わりを手に入れることもできますが、失われた加工データは2度と戻らない。何ものにも代えられません。そうなればまたゼロからつくり直さなければなりませんが、そんなことは不可能です。1週間とか1カ月ではなく、数カ月というスパンで工場が止まってしまう。お客さまには大変なご迷惑をおかけすることになりますし、当社にとってはモノがつくれないというレベルではなく、会社が存続できなくなってしまいます」。

 資産としての加工データの価値、データを失った場合の損失の大きさ、バックアップの重要性を認識していた今井社長は、過去には※PDや外付けのHDDにバックアップを行い、金庫に保管するなどの対策を取っていた。しかし、ASIS100PCL本体と同じ場所に保管していたのでは、天災や盗難に遭ったとき、元のデータともども失われてしまうため、万全とは言えない。何か良い方法はないかと考えていたとき、アマダアイリンクサービスが提供する「SDDサポートサービス」を知った。

 SDDサポートサービス

▲ASIS100PCL(左)と並んで置かれたSDDサポートサービスの「SDDサポートBOX」(右)
 今井社長が同サービスを知ったのは、長野県岡谷市で開催されたアマダの地方展示会でのこと。アマダアイリンクサービスが開発中の同サービスを展示しており、「これはいいじゃないか」と思ったという。

 同サービスは、「99.9%以上のセキュリティを実現する」ことをポリシーに開発された加工データのバックアップサービスで、次に挙げる4つの特長を備えている。

1. 2つのサーバーが止めない工場を構築
 通常利用しているASIS100PCLとは別に、「SDDサポートBOX」を設置。リアルタイムでデータの同期を行い、常時待機状態を保つことで、不測の事態には即時対応が可能となっている。ハードウエアは定期交換を行う。

2. 専門家による常時監視
 
 専任スタッフが、SDDサポートBOXのデータの同期・バックアップの状況などを常に監視し、不具合などがあればリモートでトラブル解決を行う。これにより、バックアップシステムを導入したはいいが、知らない間にシステムそのものが故障、いざという時に復旧できない、といったトラブルを防ぐことができる。

3. データセンターによる保管
 SDDサポートBOXにバックアップされたデータは、インターネットを通じてアマダアイリンクサービスが契約するデータセンターへ送信され、保管される。ASIS100PCLを使用しているのとは異なる場所、それも耐震性・セキュリティ・電力供給・空調などが万全に設備されているデータセンターで保管することにより、たとえ大震災が起こってもデータが失われることはない。また、データセンターへの送信の際には、オンライン決済にも使用される暗号化方式SSLを使用し、データの抜き取り・改ざん・なりすましなどを防ぐことができる。

4. 迅速な復旧
 通常使用しているASIS100PCLにトラブルが発生した際には、SDDサポートBOXが機能を代行し、工場を止めることなく迅速な復旧を行う。アマダアイリンクサービスが復旧まで万全のサポートを行い、万が一、SDDサポートBOXまで故障した場合には、データセンターに保管されているデータをもとに復旧作業を行う。


SDDサポートサービスの詳しいご案内はこちらから

 データの活用によりプログラム工程の負荷を大幅に軽減

▲ベンディングマシンHDS-1303NTでDr.ABE_Bendが自動作成した加工データをSDDから呼び出して加工する

▲パンチ・レーザ複合マシンEML-3510NT+ASR-48Mでブランク加工を行う
  空調機器、産業機械、IT関連機器の精密板金加工を手がける同社は1996年に板金加工ネットワークサーバー ASIS100PCLを導入、早くから工場のネットワーク化、データの一元化に取り組んできた。

 現在、発注元から送られてくる図面は、一部に紙図面が残っているが、ほとんどの場合はDXFデータ。これを2次元CAD/CAM AP100 2台で展開・CAM割り付けを行い、展開図データ、CAMデータをASIS100PCLサーバー(SDD)に記録する。それをもとにWinNESTが得意先別、製品別、材質・板厚、加工スケジュール単位ごとにネスティングを行い、パンチ・レーザ複合マシンEML-3510NT+ASR-48Mやパンチングマシン EM-2510NTといったブランク工程の加工マシンに受け渡して実加工を行う。現在、空調関係の納期は確定受注からおおよそ4日。同社では確定受注を1日先行して、ネスティングとブランク加工に着手している。4日よりも長い納期の場合、数量や納期など、注文変更が入りやすいため、歩留りの良いネスティングを行おうとすると注文変更に追われることになるが、SDDに保管されているリピート品の加工データを活用することでプログラム工程の負荷が大幅に軽減されている。

 バックアップが死活問題に

▲自社で塗装を行った産業機械用のカバー

▲産業機械用のカバー
 曲げ加工データは、曲げ加工データ作成全自動CAM Dr.ABE_Bend がSDDへ自動的に展開図、立体姿図データを取りに行き、全自動で曲げ加工可否を行い、“可”と判断した製品の曲げ加工データを作成、曲げ順・金型・レイアウトなどのパラメーターを再びSDDに保存する。曲げ工程ではネットワーク対応ベンディングマシンHDS-1303NT、HDS-8025NT 2台、FBDV-8025NT 2台のAMNC/PC画面から、SDDに登録された曲げ加工データを呼び出して、加工を行う。

 リピート率が70〜80%と高い同社にとって、ネットワーク化とデータの一元化による加工データの2度づくり防止効果は絶大だった。データの活用度に比例してデータの価値は高まり、バックアップは会社の存続にかかわる死活問題となっていった。

 地方展でみた「SDDサポートサービス」がリリースされたという連絡を受けた今井社長は、即座に導入を決断した。

 人間のノウハウの重要さもデータと同じ

▲各係の現場に設置された目標管理版

▲3次元測定器による製品検査を行っている
 2007年に就任した今井政彦社長は、年度はじめの基本方針、品質目標、コスト目標などを社員に伝える際にもPowerPointで資料を作成してプレゼンテーションを行うなど、ITを活用して熱心な管理を行っている。「不良ゼロへ挑戦」と題した不良撃退の取り組みも行っており、職場ごとに不良を出さなかった日数をカウントして記録し、目標達成のあかつきには、表彰し、賞品を授与する。得意先からだけでなく、社内の後工程から品質不良が指摘された場合も「不良」とカウントするため、作業者単位で自然と品質への意識が高まっている。

 不況の影響で仕事量が減少する中、同社が現在取り組んでいるのが“多能工の育成”。最初にそれぞれの社員から現在の職場以外に取り組みたい職種の希望を聞き、それを受けて課題を与え、挑戦してもらう。各職場には「目標管理板」を設置。「製造2課 板金係」のような各係の評価表およびレーダーチャート表、「各個人の教育計画表」、「各個人の自己評価表」を貼り出している。

 「以前から多能工の育成には取り組みたいと考えていましたが、仕事が混んでいる間は、なかなか手を付けることができませんでした。今回の不況は、多能工育成に着手するまたとないチャンスです。仕事量が回復した時に少ない人数でも対応できるように今から準備しておきたい。作業者のノウハウもデータと同じで、何ものにも代えられません。育て、蓄積し、伝えていかなければ」と語る今井社長。カリスマ経営者の後を継ぎ、ITを最大限に活用した知的な経営手腕で不況に立ち向かう。

 
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