IT活用インタビュー
 
設計から曲げ工程まで有機的な連携を実現

− 8代目の生産管理システムAPC21導入により合理化を推進 −
曲げ工程ではHDS-NT 3台、FMB 6台、FBD 2台がすべてネットワークで繋がっている
株式会社常盤製作所
代表取締役

岡村 誠容(ひろし)

住所 栃木県佐野市栄町13-3
TEL 0283-23-1234
創業 1948年
従業員数 90名
URL http://www.tokiwass.co.jp/
業種 発券機・改札機などの社会インフラ、医療機器、FA/OA機器、通信機器、電力用トランス、高圧充電装置の筐体など
   
会社経歴 1934年、東京都港区にて創業、通信機器用部品の組立を行う。1945年、栃木県佐野市に移転、発電ランプ、X線検査装置関連部品を製作。
1948年、株式改組。1970年、佐野工業団地(現在地)へ移転。1999年、組立工場「大平みずほ工場」とレーザ工場「常盤LC」を建設。2001年にISO9001、2007年にKES環境マネジメントシステム・スタンダード認定取得。

主要設備
レーザマシン4台、パンチ・レーザ複合マシン EML Z-3510NT+ASR-48M+TK、パンチングマシン VIPROS Z-358PDC+ASR-48NJ、VIPROS-358King+MP-1224EX、ベンディングマシン HDS-8025NT、HDS-1303NT×2台、FMB-5613NT、FMB-208×6台、FBDV-1253FS×2台、スポット溶接機14台、アマダインバータ2台、曲げ加工データ作成全自動CAM Dr.ABE_Bend、2次元CAD/CAM AP100
 

▲岡村 誠容(ひろし)社長
 同社は、板金筐体などの試作・量産加工を中心に、新製品の開発・設計受託などを行っている。主要な得意先は、東芝、富士通、旭精工、キヤノン、リコープリンティングシステムズ、日立関係など約30社。このうち毎月コンスタントに発注が来るのは12〜13社となっている。

 仕事の内容は、設計・試作から、シャーリング加工、ブランク加工、曲げ加工、プレス加工、溶接、塗装・表面処理(外注)、組立までの一貫生産に対応している。1999年には首都圏から80q離れた、県の土地開発公社が造成した「大平みずほ企業団地」に土地を求めた。同団地は、鉄道・道路の整備が進み、東北自動車道の佐野藤岡ICからも20分という便利な場所に位置しており、物流にも最適のロケーション。同社は大平みずほ企業団地内に組立工場「大平みずほ工場」を建設、アセンブリーラインを強化したことにより、製造から、組立・完成品まで一貫して対応する力を備えた。

 生産管理システムによるOAの草分け
 同社はこれまで、常に時代を先取りする設備投資を続けてきた。

 特に生産管理システムは、1978年に富士通のSYSTEM80というオフコンを導入し、システムを構築板金企業としては異例の早さで、来るべき時代に備えOA化に取り組んだ。当初のシステムは現場端末を置かず、事務所で受注登録を行い、作業指示書をどんどん発行して、製品完成後に指示書を事務所に回収して消し込みを行う、という着手、完了情報しか管理できなかった。

 「富士通の仕事を受けていたので、富士通のSEと仕様を打ち合わせて設計、帳票のレイアウトも含めてオーダーメイドで開発しました。当社は常に時代を先取りし、時には過剰設備ではないかと思われるような投資もしてきました。ここで投資をやめてしまったら今までの投資が生きてこなくなる、と考えるとともに、新しいモノ、安くて良いモノを早くつくることができないのでは、という強い危機感がありました」と岡村社長は語る。それ以降も富士通の9450シリーズ、Mシリーズといったオフコン、ANAFACOMU-1200といったミニコンを生産管理システムとして次々に導入していった。

 APC21導入を決断

▲ASIS100PCL(SDD)から加工データを呼び出してネスティングを行う

▲受注情報は自社独自の生産管理ソフトに登録している

▲3次元データはSheetWorksで読み込んで板金属性の入った展開図を自動作成する

▲2006年に導入したパンチ・レーザ複合マシンEML-3510NT+ASR-48M+TK
 同社は昨年、アマダシステムズの生産管理システムAPC21の導入を決断、来年3月に導入する予定となっている。同社にとって8代目の生産管理システムとなるAPC21の導入により、岡村社長は生産管理と生産技術との有機的な連携を目指している。

 APC21の導入により、受注、在庫管理、製品管理、原価管理、生産手配、材料、購入品、外注手配、工程別進捗、出荷、売上までの一括管理を行うことができるようになる。

 EDIで受け取った発注情報を登録し、山積みデータに落とす。納期に基づき、自動的に最適なスケジューリングを行うとともに、バーコード付きの作業指示書、現品票を発行する。製番単位で管理するとともに受注負荷情報から自動的に工程ごとの山崩しを行い、最適なスケジューリングを行う。

 一方で製品情報は発注元から送られてくるDXFデータをAP100で展開、作成した展開図データは、板金ネットワークサーバーASIS100PCL(SDD)に保存する。APC21はスケジュールに合わせてパンチング加工用のネスティングを実行。ネスティングはASIS100PCLにあるWinNESTを使用する。WinNESTは材質・板厚・製品・スケジュールの単位ごとに自動で行い、歩留りの改善にも大きく貢献した。作成したネスティングデータは、2006年に導入したEML-3510NTと、VIPROSZ-358PDC、VIPROS-358Kingに受け渡し、正確で素早いブランク加工を行う。

 また、現場端末と無線のバーコードリーダーにより、APC21が工程別進捗情報を吸い上げるとともに、出荷・売上管理にも繋げていく。
 曲げ工程まで有機的に連携

▲ネットワーク対応型ベンディングマシンはほとんどの加工をDr.ABE_Bendで作成した曲げ加工データを呼び出して行っている
 さらに同社は2002年、曲げ加工データ作成全自動CAM Dr.ABE_Bendとネットワーク対応型ベンディングマシンHDS-1303NTを2台導入。曲げ加工データの外段取り化を実現した。AP100が作成し、SDDに保存した展開図データをDr.ABE_Bendが自動的に取りにいき、曲げ加工可否を実行。“可”と判断された製品は、自動でバックゲージ寸法L軸および曲げ角度D軸はもちろんのこと、保有金型から使用金型の選定および金型取付レイアウトに至るまですべての曲げCAMを作成し、再びSDDに登録・保存する。現場ではネットワーク対応型ベンディングマシンのコントローラーAMNC/PCにネットワークを介してSDDからDr.ABE_Bendが作成した曲げ加工データを呼び出し、AMNC/PCの指示どおりに加工を行うことでノンスキル作業者でもベテランが曲げたものと同じ製品ができる。曲げ加工データ作成の外段取り化により、従来の、マシンを止めてAMNC/PC画面上で曲げ順序と金型選定を行い、曲げ加工データを作成する内段取り作業が低減し、生産性の大幅な改善と同時にコストの低減に結び付くとともに、作業者の負担も軽減した。

 将来的には2系統のシステムを1系統に統合
 同社は、1996年にオンライン対応の2次元CAD/CAMを導入した際、事務所と工場のネットワーク化を実現。1999年に市内にレーザ工場「常盤LC」を建設した際にはVPNを敷設し、ネットワークを介して加工データと生産管理情報をスムーズにやりとりしている。

 「当社には現在2系統のシステムが混在しています。1つは、板金ネットワークシステムASIS100PCL、2次元CAD/CAM AP100、ネスティングソフトWinNEST、曲げ加工データ作成全自動CAM Dr.ABE_Bend、現場の各マシンで構成されたアマダのシステムで、非常に効率よく有機的に連携しています。もう1つは、レーザ工場で稼働している他社のレーザマシンと自動プロで、アマダのシステムとは別系統で稼働していますが、将来的には1系統に統合し、システムの簡素化とスピードアップを強化したいと考えています。これから当社はAPC21を中心とした生産システムを構築しますが、まだまだ改善の余地はあります。今後もより効果的な生産システムの構築を模索していきたいと考えています」。

 モノづくりはヒトづくり

▲完成した製品をノギスなどで検査を行う

▲組立用に積まれた製品。キズ防止に合紙が挟まれている

▲梱包出荷待ちの製品
 「ネットワーク化やIT化が急激に進んだことで、ここ15年くらいで産業構造は一変しました。ソフトウエアも加工マシンも高性能化し、自動化・省力化が進んだ結果、技術がなくてもできる部分が増えていきました。しかし、その反面、技術を持った技能者はどんどん減っています。モノづくりにとって必要なのは“ヒトと技術の調和”。このままではいけないということで、当社が加盟する栃木県シートメタル工業会でも技能検定を推奨し、当社にも板金技能検定1級取得者が9人います。2級にいたっては20人が取得し1級2級を合わせると29人が合格しています。受験を希望する社員には、支援をする体制を整えています。生産設備を最大限活用しながらも、『誰にもできないものを、なんとかしてやり遂げる』、オンリーワンの企業を目指すからには、そういう志を持っていることが理想です」と語る岡村社長。生産設備に惜しみない投資を行いながら、ヒトづくりにも余念がない。
 
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