IT活用インタビュー
 
SDDサポートサービスで不安を一掃

− IT活用による品質安定で発注元の信頼を獲得 −
ブランク工程の主力、パンチ・レーザ複合マシンAPELIOV-357VNT(棚付き)
有限会社三晶工業
代表取締役

茂木 宏之(もてぎ ひろゆき)

住所 栃木県下都賀郡壬生町おもちゃのまち4-10-22
TEL 0282-86-3234
設立 1979年
従業員数 18名
URL http://www.sansyo-kg.co.jp/
業種 食品機械、測定機器、半導体製造装置関連
   
会社経歴 茂木社長の10余年の工場勤務経験を活かし、1979年、多くの有名おもちゃメーカーが集まる「おもちゃのまち工業団地」で知人の工場の一角を借りて設立。1982年、同団地内の現在地へ移転。

主要設備
パンチ・レーザ複合マシン APELIOV-357VNT+ASR-48NJ、レーザマシン LCV-2412β+AS-1048PC、精密加工用パンチングマシン MERC-722、ベンディングマシン HDS-8025NT、曲げ加工データ作成全自動CAM Dr.ABE_Bend、3次元ソリッド板金 CAD SheetWorks、生産管理システム WILL受注・出荷モジュール+M
 
 1990年代後半からIT化を 推進

▲(有)三晶工業 工場外観
 1979年、おもちゃのまち工業団地内で知人の工場の一角を借りて設立された同社は、取引していたFA関連設備メーカーの事業発展とともに業績を拡大。当初はセットプレスSP-30と油圧ベンダーSPH-30Cだけだった設備も、1982年頃にパンチングマシンPEGA-344を導入したのをきっかけに、少しずつ充実させていった。

 1997年には板金ネットワークシステムのサーバーであるASIS100PCLをいち早く導入。2次元CAD/CAM AP60で作成したプログラムを記録し、2度づくりを防止してリピート加工に対応する体制を築いた。2001年にはAP100を導入するとともに、既設のレーザマシンLCV-2412βに現場端末PEU/Winを増設し、事務所と工場をネットワーク化した。2004年には生産管理システムWILL受注・出荷管理モジュール+Mを導入、2008年にはHDS-8025NTと曲げ加工データ作成全自動CAM Dr.ABE_Bend、3次元ソリッド板金CAD SheetWorksを導入するなど、着実に工場のIT化を推進してきた。

 紙からデータへと置換

▲茂木 宏之社長
 「創業10年目までは、工場建設費の返済と設備投資とで資金繰りに苦しみました。20年目までは、既存設備の更新と新たな設備投資が重なって、やはり苦しみました。新規設備が一通り終わるまでに要した期間は25〜30年。創業後31年が経過した現在は、更新時期がきた設備を1つずつリプレースしていけば良いので、かなりの余裕を持って設備投資を考えられるようになりました」と茂木社長は語る。

 設備投資は、同業者から仕入れる情報と、アマダからの提案を採り入れながら、積極的に進めていった。

 「個人的にはITは苦手な分野でしたが、必要に迫られて自分でも使うようになってからは、たしかに画期的だと思うようになりました。生産管理情報の一元化はもちろん、プログラム工程では展開ミスも激減し、データの2度づくりがなくなったことで工数削減とともに品質安定にも繋がっていきました」。

 手応えを得た茂木社長は工場設備のさらなるIT化を加速。ネットワーク対応マシンを導入し、受注台帳・見積書・注文書・図面・展開データ・加工データ・製造指示書など、あらゆる情報が紙からデータへと置き換わっていった。

 EDI受注から展開・加工データ作成・加工まで一気通貫

▲メインの得意先3社のうち、2社とはEDIで自動的にWILLに受注情報が積み上げられる

▲AP100で展開をする際は立体姿図で検証を行う

▲WILLから発行される生産指示書には必ずAP100の立体姿図を付ける

▲納期ごとに色分けされた現品票を生産指示書に添付する(赤は特急品)
 同社の主要得意先3社のうち2社はEDI受注を導入しており、受注から受注登録、展開、ネスティング・曲げ加工データ作成、加工まで一気通貫で行える体制を構築している。

 新規の案件はまずEDIで引合いが入り、図面(DXF)を呼び出して納期確認を行う。EDI上で見積りを提示し、金額が決定すると受注が確定、注文書を出力できるようになる。受注情報はWILLに登録、AP100で作成した立体姿図が印刷された生産指示書を発行して、図面と一緒に現場に流す。その際、納期によって色分けした現品票も別途添付し、納期遅延の防止や特急品対応に役立てている。

 プログラム工程では、主にAP100で展開を行い、ASIS100PCLサーバー(SDD)に保管する。上流設計の3次元化を見越して導入したSheetWorksは、情報漏洩を危惧する発注元から3次元データの提供をなかなか受けられず、本来の目的だった受けCADとしてではなく、複雑形状の製品を3次元モデル化して自動展開して活用している。AP100・SheetWorksで作成し、SDDに保管した展開図データは、Dr.ABE_Bendがバッチ処理で読み取り、曲げ加工データを自動作成。現場では、AP100のネスティング機能(オプション)で作成したネスティングデータと、Dr.ABE_Bendが作成した曲げ加工データを呼び出して、即座に加工に移る。
 SDDサポートサービス導入で不安を払拭

▲ASIS100PCLサーバー(SDD)(右)の内容を「SDDサポートBOX」(左)へバックアップすると同時にWebを通じてデータセンターへ送る
 IT化による効率的な生産体制を構築した同社だったが、昨年12月、WILLのサーバーが突然故障。受注処理が滞り、注文書や生産指示書も発行できなくなった。大至急アマダの営業マンに来てもらい、丸1日かけてようやく仮復旧。その後すぐに代替のハードウエアを購入し、サーバー機能を移行する騒ぎとなった。

 「この時の体験で、データの大切さが身に染みました。WILLにはすべての受注情報、SDDには図面から加工データにいたるすべての製造データが保管されていますから、サーバーが機能しなくなるだけで工場は止まってしまう。当社に限らず、中小製造業はITを活用することはできても、故障などの不測の事態に直面した時に対処する術を持っていません。昔のように紙ベースでファイリングしてキャビネットに保管するのであれば故障は起きないでしょうが、火災などに対してはかえって無防備です。その点、SDDサポートサービスは、WILLとSDD両方のデータを、Webを通じて外部の信頼できるデータセンターへ送信し、バックアップを取ることができます。さらに、ハードウエアが故障したとしても即座に代替機の『SDDサポートBOX』に機能を移して操業を続けることができます」。

 昨年12月、WILLのサーバーの故障からほとんど間を置かずに、茂木社長は同サービスの導入を決断。「幸い、効果を確かめる機会は今のところありませんが、WILLのサーバーが故障した時に抱いた不安は払拭されました」と語っている。

 主要3社・3業種からの受注でリスクを分散

▲レーザ専用機のLCV-AP100で展開をする際は立体姿図で検証2412β(パレットチェンジャー付き)

▲HDS-8025NTでDr.ABE_Bendが作成した曲げ加工データを呼び出して加工する
 同社の得意先は15社前後。そのうち主要3社が売上の大半を占める。現在のメインは食品機械、半導体製造装置関連、測定機器の精密板金加工の3業種で、その他に照明器具関連や工作機械関連も手がける。

 リピート率は、半導体製造装置関連と測定機器が約90%、食品機械が30%となっている。モデルチェンジの周期はだいたい2年で、試作の仕事を受ければ、その後の2年間はリピートの仕事を確保できる。物量もある程度予測できるので、初期ロットでまとめ生産を行い、在庫から引き当てることで納期短縮と原価低減に対応している。

 「業種が分散しているのは、景気変動に対応するリスクヘッジとして有効な手段と考えています。以前は、得意先5社がそれぞれ売上の約20%ずつを占めるといったバランスの良い時期もありましたが、現在ではどれかが落ち込んでも、どれかが伸びる。そのおかげで、リーマンショックのダメージも最小限で切り抜けられたと思います」。

 高品質・短納期を推進、信頼獲得で“ノー検”を目指す

▲超薄板のブランク加工はMERC-722で行う
 「業種が異なるとはいえ、当社で扱っているのは品質・精度を要求される製品ばかり。大ロットの量産品というわけでもありませんから、海外シフトが急速に進むとも思えません。中には中国、ブラジル、オランダなどに工場を持っているお客さまもいますが、現地で生産した製品の品質が低く、国内生産に再び切り替えるケースもあります。その代わり、国内のサプライヤーに対する品質と納期に対する要求は非常に高い。お客さまによっては、PPM(0.0001%)単位の不良率を求められ、1カ月に1個、不良が発生するだけでも取引業者中ワーストの不良率となってしまいます。お客さまの品質管理部門
から品質に不安があると判断されれば、すぐに調達部門に反映され、仕事はなくなってしまう。何よりも怖れている事態です。その一方で、安定して高品質の製品を提供し続けられれば、“ノー検”扱いにしてくれるお客さまも出てきます。そうなると当社の責任は増し、これまで以上にしっかりやらなければというプレッシャーが大きくなる代わりに、お客さまの信頼を勝ち得たという確信に繋がります。日々の品質安定の先には、“ノー検”があると言っても過言ではありません。当社は作業マニュアルも整備していますが、実践が100%は追い付かず、不良ゼロにはなかなか到達できません。毎日の朝礼で唱和(納期厳守・品質安定・整理整頓・不良ゼロ)を行うなどのメンタル面での働きかけもさることながら、充実した加工マシンやITなどの設備を活用して、さらなる品質の向上を図っていきたい」と語る茂木社長。“高品質”を武器に得意先の信頼
向上を目指す。
 
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