著名者インタビュー
メニュー前ページ次ページ |

 2001/10
IT時代の脳力アップ講座


健康能率研究所所長・医学博士
斉藤 英治(さいとう えいじ)
昭和15年山形市生まれ。東北大学医学部薬学科卒。昭和37年武田薬品工業に入社。ビタミン栄養の研究開発に従事。国際・開発・学術の各担当課長、学術情報誌編集長を経て、平成元年2月退社。
健康・医事評論家として健康能率研究所を設立、講演や執筆活動に入る。
平成2年日本総合医学会常任理事。この間、伝統的左脳速読から出発し、右脳速読に出会い、これを総合した「全脳速読」を開発。
 
著書に「月に50冊読める速読術」「オトコは単身赴任で男になる」「エイズ、ガンはビタミンCで治る」(以下徳間書店)、「全脳速読法」(廣済堂出版)、「右脳パワー強化術」「メンタルパワー強化術」「ワープロ・スピード・タイピング」「脳力アップ超速読術」(日本芸文社)、「頭が良くなる食事法」(主婦と生活社)、「べんり速読術」(日本実業出版社)など、多数。
 
 IT時代の脳力アップ講座

 IT(情報技術)という言葉が普遍的に使われるようになっていますが、その本質は、ITというツールを利用した人間の意識革命にあります。実際、米国はじめ欧米各国では加熱したITブームは去り、ITをベースとした知識経済時代、知識資本時代が到来したといわれています。カネやモノに大きな価値があった時代から、人間の頭脳が創造する知識・知恵が最大の価値を生み出す時代へと本質的に転換していくだろうと予測されているのです。

 したがって、新しい時代に対応するためには、最大の価値を生み出すためのベースとなる“脳力”をアップさせていかなければなりません。そこで今回は、新しい時代に勝ち抜くために誰にでもできる“脳力アップ”について述べたいとおもいます。

 これからは、個人の“脳力”が重視される時代になります。特別の装備は必要としないだけに、意欲ある個人、中小企業には有利な状況になるということを心して“脳力アップ”を図っていきたいものです。

 

 脳力アップにより知識創造ができる人が勝利を得る時代

 近年のITの進展は著しく、私たちの生活、産業活動の形態が大きく変革しました。まさに革命という言葉にふさわしい状況に私たちは直面しましたが、ITという基盤が整備された次には、BT(バイオテクノロジー)、NT(ナノテクノロジー)といった基幹技術が視野に入ってきています。その先にはまた新たな基幹技術が生み出されることは間違いありませんが、そのなかでいま改めて認識されているのが、新技術としてのIT、BT、NTなどを有効的に活用し、付加価値を生み出していく人間の頭脳の“脳力アップ”なのです。

 実際、米国では「豊かな生活は知性から」、英国では「学ぶ姿勢が明日を開く」、オーストラリアでは「頭脳国家」といったスローガンを掲げ、IT以後の時代の変革に対する具体的な取り組みを始めています。

 これらのスローガンを一言でいえば、“学習による脳力、知性の向上”ということになりますが、翻って日本はどうかというと、江戸時代は庶民が寺小屋で読み書きそろばんを習い、当時の世界の中では日本がもっとも識字率の高い国の一つでしたし、創意工夫によってモノに付加価値をつけることは日本人の得意とするところです。大手企業、中小企業を問わず元気のある企業は、製品に占める“知識・知恵の割合”が75%ともいわれています。経済を活性化させ、空洞化を回避するためには労働集約型から技術集約型へ、さらに知識集約型へと集約していく必要性は以前からいわれていることですが、その確立が今後不可欠になるなかで私ども個々の“脳力アップ”がその成否を握るといって間違いありません。

 

 脳力アップの仕組みとメカニズムを知る
それでは“脳力アップ”をどのように図っていくか。そのためにはまずその仕組みとメカニズムを知ることが必要です。

 “自分の記憶力や学習意欲、読書力は年々衰えていく。毎日、脳細胞が10万個も死んでいくそうだから無理もない。いまさら学習なんて”と思っている人はいないでしょうか。このようなとき、脳細胞のメカニズムを知れば考え方も前向きに変わってきます。脳には脳細胞が約140億個ありますが、一日に10万個死んだとしても、一生のうちでせいぜい5%程度です。それよりも素晴らしいのは、各脳細胞から1000本もの神経線維やシナプスが伸びる可能性をもっており、それらが相互につながったとき脳内に情報・知識の網の目ネットワーク、回路ができるということです(図1)。

 情報・知識の網の目ネットワークの伸びる可能性は、脳細胞140億個の1000乗という天文学的数字となり、これは学習や頭脳の鍛錬により日々伸びていくのです。これが脳力アップの本質です。脳力アップの訓練がなされた人は、その脳力は何歳になっても強化されることはあっても、弱まることはありません。ただし、頭を使わない人は網の目ネットワークがリストラされ、脳力は衰えていきます。日常の心がけの差で脳力に大きな差が出てくるのです。

 

 脳力アップのコツを知ろう

 脳は高度なコンピューターをはるかに超えるすぐれものであって、モデル化して示すと、図2のようになります。入る情報量(インプット)が増えれば、情報同士が異種結合をして、アウトプット(実績、成果、知識創造)が生まれてきます。組み合わせ公式により、単純比例というよりも幾何級数的に膨大なアウトプットが生まれてくるのです。

 アメリカには、Garbage−In, Garbage−Out(がらくたが脳内に入れば、がらくたが出てくる)ということわざがありますが、私はこれを逆手にとって、Diamond-In, Diamond-Outという比喩を提案しています。つまり、ダイヤモンドのような良質の情報・知識を大量に頭脳に入れると、ダイヤモンドのような輝いた良質のアイデア、新しい知識が頭脳から出てくるという意味です。

 そこで“脳力アップ”の第一のコツは知識創造のための材料となる良質の情報、知識を頭脳にインプットしていくことです。そして良質の情報を効率よく吸収していくために、頭脳ボックスの中を、最良のアウトプットが醸成できるよう最良の環境にしなければなりません。いい替えれば、脳が最大限活動できる健康状態にしておくことです。全身から脳に、活力ある栄養分と酸素に富み、きれいなさらさらした血液が送り込まれる。それによって脳細胞はよみがえり、新たな活動を始めることができるからです。不摂生な生活や食事をしてストレスをため込み、汚れた血液やストレスを脳細胞に送り込んでいては良い成果を生み出すことはできません。米国のビジネスエリートが健康に細心の注意を払うのもこのような根拠からなされているのです。

 目標を明確に設定することも“脳力アップ”の重要な要素です。目標が明確になることによって頭脳ボックスの中の情報単位が集約され、情報を有機的に結合させることが容易にできるようになるからです。

 

 脳力アップの訓練を3分間でできるED3S法
 最後に、日常のちょっとした心掛けでできる“脳力アップ”のための訓練法を紹介することにします。こんなこと、と軽く見ずに、日々意識して継続することをお奨めします。日常のちょっとした心掛けによって明るく前向きに知識創造を行い、ナレッジワーカーとなって新しい時代を勝ち抜いていきましょう。

(1) ED:Everyday Dream
 直訳すれば“いつでも夢を!”です。某ハンバーガーショップの標語Everyday Low Price(いつでも安い価格)をもじったものです。寝ているときに見る夢のことではなく、希望に満ちた、明るいわくわくする目標を設定してみてください。それをできるだけ鮮明に、具体的にイメージするのです。人はわくわくした夢をもつと、脳内ホルモンが出て、それが脳細胞と体の細胞を活性化させます。夢を持つと不思議に体内の疲れが取れていくから不思議です。

(2) S:スマイル
 顔をにっこりさせる。そうすると顔の表情筋は、必要な筋肉をリラックスさせ、福を内からも外からも呼び込む態勢となります。気持ちも明るく楽しくなる不思議な現象です。

(3) S:ストレート
 背筋は真っ直ぐに(ストレート)。背筋をピンと伸ばすと、自信がつき、気持ちが前向きになり、快く引き締まってきます。背筋は伸ばしても他の筋肉はリラックスしたままで。

(4) S:深呼吸
 自然に深呼吸してみてください。いつもよりややゆっくり深く息を吐いて、ややゆっくり息を吸いこむことを1分間繰り返します。楽な自然な気持ちで深呼吸をすると次の3つの効果があるとされています。
  1. 深い呼吸により、必要な酸素が脳に多く供給され、不要な炭酸ガスが排出されるため脳の活動が活発となる。
  2. 自律神経の働きを調整し、からだ全体の働きを活発にする。腹式呼吸は横隔膜を上下に動かすために内臓やホルモン、自律神経などが刺激され、活発となる。
  3. ゆっくりと深呼吸するため、こころの中が落ちつき、気持ちが集中する。

 息を吐くときは、肺の中のすべてを出し切る気持ちで。息を吸うときは、喜び、元気、新しい意欲なども吸い込むようにイメージしましょう。1分でも深呼吸をすればすっきりとし、会議や面接、スピーチなど重要な場面の前の心の準備にも応用できます。5分でもやれば、立派な瞑想になります。