著名者インタビュー
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 2001/12
若手社員を2倍働かせる方法…
      …若手から見た理想の上司


コミュニケーション工学研究所
近藤雅和氏
コミュニケーション工学研究所取締役。
経営コンサルトおよび企業デザインの再構築について提案している。月刊「人事マネジメント」「税務新聞」「エキスパートナース」などに連載している。

主な著書に「会議の技術」(MG出版)「先進企業のデザイン戦略」「CIに見る企業革新実例集」「規制緩和」(アーバンプロデュース、共著)「無店舗商法で儲けよう」「規制緩和で商売チャンスが広がる」(オーエス出版)「縮小経済は企業淘汰の時代」(山下出版)「eコマース最前線」(廣済堂出版)「ビジネスに活かす101の法律」(かんき出版)「ブロードバンド・ビジネスのしくみ」(明日香出版)「ネット提携」(青春出版)など多数。
近刊予定……「ファイナンシャルプランナーの役割」「高齢者ビジネス」「NPOの将来性」「コミュニティビジネス」など。
 
 若手社員を2倍働かせる方法
  だいぶ以前、“新人類”なる言葉が流行しました。よくいえば、新しい感性を持った若手のことですが、多くの場合、何を考えているのか理解できない困った人を意味します。注意しても、苦言を呈しても「馬に念仏」のようで、どのように扱っていいのかわからない若い世代……それを“新人類”と呼んでいました。
 ここまで困った人は少ないとしても、最近の若手社員をチェックしている上司や中間管理者からみると、「若手社員にはバイタリティというか、ヤル気が感じられない」とか、「仕事に本気でぶつかっていない」といったイメージが強いようです。そんな若手社員たちは、バブル時代を経て、リッチな気分のなかで育ったからでしょうか、あるいは閉塞した社会のなかでは“額に汗して”ガンバっても仕方がないと勘違いしているのか。いずれにしても、若手社員にこそしっかり働いてもらわないといけません。若いんだから“出し惜しみ”せずに2倍は働いてもらいたい! そのためには、どうすればいいのかを提案したいと思います。そして、若手が気分よく(?)働きたいと感じる上司とはどんな人をイメージしているのでしょうか。若手社員にヤル気を出させ、統率力のある理想のリーダー像についても、考えてみましょう。

 

 ヤル気を出させるには、モチベーションが必要
  最近の若手社員について、「もっと働いてほしい」と感じている上司の方は多いと思います。それに、上司の多くは「オレたちが若かった頃は、必死に働いたものだが……」と嘆いています。どうしたら、若手社員のヤル気を引き出すことができるのか。これは永遠のテーマといえるほどの難問です。だいぶ以前から、学生のときの成績が優秀でも仕事の現場で充分に働いてもらわなければ、ビジネスマンとしての価値はないといわれてきましたし、“指示待ち人間”がいては職場全体がパワーダウンしてしまいます。そんな若手社員を2倍働かせるには、ヤル気を持たせて行動力を向上させることが必要です。
 若手社員にヤル気を出させ、行動力をアップさせるには、上司は彼らのなかに眠っている(潜在している)意欲を喚起させなければいけません。意欲を喚起させるには、社員自身が「何をすべきか」というモチベーション(動機づけ)を確立させるべきです。

 そこで、若手社員に次のようなことを質問し、話し合う機会をつくってください。

* この仕事が「なぜ必要なのか」 … 利益の追求といった理由のほか、スキルを身に付け将来への展望を開く、物をつくる喜びといった身近な動機づけを共に考えるようにしてください。

* 「どのくらい必要なのか」 … 動機づけができたら次は目標を明確に設定することです。ただ闇雲に上司が叫んでも、空回りするだけです。技能検定に挑戦する、工程のあるパートを任せる、達成したら具体的に褒賞することも必要です。ある程度の目標値を決めてこそ、意欲が出てくるものです。

*そのために「自分はどんな行動が必要なのか」 … 目標に近づくには、現在何をすればいいのか。ここが最大のポイントになります。スタートよければすべて良しの例え通り、スタート時には具体的にカリキュラムをつくり徹底的に面倒を見てください。道筋ができると、自分で成すべき仕事がイメージしやすくなります。回路が円滑に動き出すと仕事へのやる気が出てくるし、それが自分の人生(生きざま)と合致すれば、仕事することが自己実現の一つとして機能するようになるはずです。

 以上のような点を踏まえて、まずは頻繁にミーティングの機会を持ってください。これが意外とおざなりになっているのです。目標を設定でき、夢を持つことができれば若い人はおもわぬ力を発揮するものです。わかりきったこととおもわず、先ず上司から手を差し伸べることが大事なのです。

 

 目標や計画を設定し、達成度に応じて評価
  たしかに“マニュアル世代”の若い社員はマニュアルに書いてあることしかしないし、応用がきかないようです。いわれたことだけでなく、状況に応じて気をきかせて仕事をしてほしいのですが、それがうまくできない社員も増えています。
 まず、上司は“積極的な対応ができない社員”と、“進んで取り組もうとしないヤル気のない社員”とを見分けてください。ともに実績が上がらないという共通点はあるものの、前者は後天的な要素が多く、後者は先天的な要素が多いようです。前者は意欲を阻害している悩みなどを排除すればいいのですが、後者は自尊心の高揚や自己実現の支援が必要になってきます。
 そこで、OJTといった現場での教育でも、若い社員にヤル気を出させる工夫が必要になります。前述した仕事の目標や計画づくりについて、工夫例を紹介しましょう。

@仕事の目標や計画は、上司と若い社員がともに考えるようにしてください。上司は仕事の意義や必要性を話し、目標値や計画(仕事の手順、納期までのタイムスケジュールなど)を部下の意見も聞きながら設定します。

Aよりヤル気を出させるには、若い社員が目標や計画を設定し、それを文章化して提案させるようにします。それができるようになるには、さまざまな目標例や計画例などの資料や情報を部下に与え、考えさせることが大切です。低い目標であれば、賞与などで差をつけるといった方法もあります。

B上司と若い社員の相談によって目標や計画が設定されたら、上司はそれを達成できるように指導・支援します。期間を決めて達成度を上司が評価し、それに応じた賃金体系があったほうがいいかもしれません。

 

 「説明・模範・実習・評価」 という4ステップ
  仕事へのヤル気をなくしてしまった理由には、上司や同僚との関係を悩んでいるとか、仕事が自分に適していない、ストレスがたまっている、体調がすぐれない…など、さまざま要因が考えられます。それを上司は聞き出して、適切に対応すればいいのですが、困るのは「なんとなくヤル気がない」というケースです。これといった理由はないのにヤル気の出ない社員を働き者にするには、どうすればいいのでしょう?
 一つの方法として、山本五十六元帥の有名な言葉「言ってみて、やってみせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ」を応用してください。ヤル気のない社員の意欲を喚起するには、次のような方法を試してみましょう。
 まず、「言ってきかせる」、「やってみせる」、「させてみる」、最後に「結果を与える」という4つのプロセスを段階を踏んで進めていきます。

@言ってきかせる(説明)…教えることの全体像を説明する。やさしいものから始める。大切なポイント部分は質問しながら繰り返す。社員からの質問を受けて答える。

Aやってみせる(模範)…やるべきことを口頭で説明する。全体をやってみせる。ポイント部分を繰り返しやってみせる。

Bさせてみる(実習)…教えたことだけをさせる。全体をさせてみる。ポイント部分を繰り返しさせてみる。

C結果を与える(評価)…よかった部分を具体的にほめ、自信をつけさせる。改善すべき部分を指摘して正しい方法を教える。

 

 理想の上司は長嶋前監督より若松監督や古田捕手
  日本のリーダーは社員の短所を克服することに力を入れがちですが、むしろ長所を伸ばすほうが効果的です。社内の状況にもよりますが、若手社員の長所を見出し、それを伸ばす施策が望まれています。各社員の個性を見極めながら適材適所の部署で活躍できれば、企業の実績にも好影響を与えるでしょう。

 プロ野球でも「選手の適材適所が勝利の要因となる」と語るのは、オリックスの仰木監督です。仰木前監督こそ、ナインの能力を見極めて適材適所を実践した監督なのです。適材適所の人事を実践することで、社員一人ひとりの役割や権限が明確となり、責任の領域がはっきりしてきます。その結果、社員のモラルアップ、および組織の活性化に繋がっていくはずです。

 また、若手社員にとって、理想の上司を監督から選ぶとすれば、だれでしょう? 長嶋前監督や知将の野村監督は会長や社長には適していても、直属の上司には好まれないようです。むしろ、近鉄に圧勝したヤクルトの若松監督や古田捕手(30歳代半ば)でしょう。若松監督が選手にヤル気を出させ、人心を掌握した理由の一つは、選手と同じ視点でともに考えたとか、ミーティングのときにビールを呑んで打ち解けたということがあります。

 しかし、それ以上に重要なのは、巨人や中日に3連敗、4連敗したとき、監督は「自分の失敗である」と謝罪し、選手に頭を下げたというのです。自分の否を認めて責任を取った監督の態度に石井投手などは感激し、チームに熱気がみなぎり、一丸となったわけです。そういえば、日本シリーズの第2戦で藤井投手が近鉄のローズにホームランされたとき、古田投手が「オレの配球ミスだ」というように「ゴメン」のポーズをしていました。試合は負けましたが、これで若い藤井は落ち着いて後続を抑えたのです。以前から古田捕手は若手とのコミュニケーションを重視する一方、監督やコーチには選手たちの気持ちをぶつけてきました。さらに娯楽室を設置し、若手が興じるゲームも習得(?)してチームの一体感を盛り立てたそうです。

 ヤル気を出させる上司に求められるのは、責任感のある真摯な態度、そしてコミュニケーションの重視であり、こうした上司に若手社員は実力以上のパワーを発揮するのです。部下を持つ管理職の方は、若手社員の育成とともに、ご自分の態度や行動をチェックしてください。