1. 角度がでない
曲げ角度はいろいろな要因の影響を受けやすく、過去に加工実績のあるデ−タであっても 加工の前には“試し曲げ“を行って精度確認をしているのが現状です。
曲げ角度で問題となる項目をおおまかに分類すると「曲げ角度通り精度」と「角度が次第に変化する」と「角度が一定しない」になります。

通り角度不良の要因
角度が次第に変化する
角度が安定しない

 

通り角度不良の要因


【1.金型に原因がある場合】
金型の変形・摩耗
金型が変形または偏摩耗している場合は、当然、通り精度が出ません。
金型位置や分割の組み合わせを替えてみて現象が移る場合は、金型の異常が考えられます。ダイホルダ−においても同様です。

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金型の種類によるもの

グ−スネックパンチなど、それ自体の“タワミ“が大きい金型で比較的要求加圧力の大きい曲げを行った場合、ワ−クのある部分とない部分で“タワミ量“が異なるためワ−ク両端の角度が“きつく“なる事があります。
曲げ長さに合せた金型を使用する事により、解消できます。

 

【2.機械に原因がある場合】
パンチとダイの芯がずれている
金型が“芯ずれ“を起こしていると、角度左右差が発生します。

再度、確実に“芯出し“を行って下さい。
また分割ダイ使用している場合には、レ−ルとの間に「ガタがないか」を確認して下さい。

ベンダー本体
機械設置レベル、テ−ブル上昇(下降)位置での平衡度の狂い、ガイドロ−ラ− などの緩み、テ−ブル面の変形、(過去に金型を座屈させている機械は要注意)など を確認して下さい。

 

中間板
中間板自体の変形・座屈、中間板カ−ブの狂いなどを確認して下さい。
また、加圧して取り付けられているかどうかも要調査です。

※機種により、材質が異なると中間板カーブの設定条件が異なる場合があります。
※機種により、曲げ長さが異なると中間板カーブの設定条件が異なる場合があります。

 

【3.材料に原因がある場合】
材料品質の問題
材料の等級によっては、板厚や硬さにバラツキがあることがあります。
等級の高い材料を使用してください。(高精度板厚材)
また、材料に局部的な温度変化がある場合も、角度のバラツキを生じます。 板厚変化による角度への影響は
SUS<SPCC<ALの順で大きくなります。

圧延方向と板取の影響
圧延方向に対し、横方向に曲げる場合は、材料の端部と中央部で板厚や抗張力が不均等なため精度不良を生じやすい。

このような感じになっています
SPCC-SB(コイル材)t1.2mmの板厚分布の一部です。
中央が厚く、1つのロットの中でもバラツキがあることがわかります。

 

【4.作業方法に原因がある場合】
曲げ位置の影響
センタ−ベンドが基本となっている機械(RG・III 除くFBD)などでは、オフセット曲げを行った場合、そのままでは角度の通り精度がでません。

 

【5.切断方法に原因がある場合】
材料の切断方法による「ソリ」の違い
 


 
NCT・シャー
レーザー




レーザーと比べると小さい



NCT・シャーと
比べると大きい
遅くすると良くなる
傾向がある


速くすると良くなる
傾向がある
SPCC<SUS



SPCC<SUS
小(元々ソリが少ないため)
大(SUSは曲げソリが残る)


角度が次第に変化する
同一製品を曲げていると、角度が徐々にきつくなったり、徐々にあまくなったりする場合があります。
この場合、油温や気温の影響が大きいのですが、曲げていくうちに金型に異物が付着して角度に悪影響を及ぼしている場合もあります。

【1.油温・気温の影響】
実際の作業で、「午前中の早い段階で金型原点セットを行い加工開始すると、1〜2時間後 から徐々に“あまく”なっていく」というものがあります。この場合、油温・気温の上昇 から側板などが影響を受けてしまい「径時変化」を起こしている可能性があります。
最近の「NTベンダ−」などはこれを検出する機能もありますが、旧来のベンダ−については 「まめな角度測定」と「デプス値の修正」「金型原点の再設定」を心がける事が必要です。


側板等の径時変化
【2.金型付着物の影響】
SPG(亜鉛鉄板)のように、表面に皮膜処理してある材料を曲げていくと金型(ダイの肩)に剥離した皮膜が付着していきます。そのまま使用すると加圧力が上がってしまい「角度が徐々にきつくなる」ということが考えられます。
また、SUSやAL材は表面のキズを防ぐため、ビニールの保護シートが貼り付けてある場合がありますが、この場合も、剥がれたシートが付着して角度に影響 しますので、まめな点検・清掃が必要になります。



角度が安定しない
実際の作業で「曲げるたびに角度がバラツク」というものがあります。これもさまざまな要因がありますが、機械的要因なのか材料が原因なのかを見極める事が重要です。
[機械的要因]
  • D軸位置決め機構部(上限装置など)に“ガタ”が発生している場合には、テ−ブル位置決めが曖昧になりますので、角度がバラツク原因となります。
  • 作動油の品質が劣化している場合、加圧力が安定いたしません。定期的な点検、交換実施が肝心です。
[材料の影響]
  • 材料ロットの異なる物が混在している場合には、それぞれの材料の硬さが違う事もあるため、結果的に「角度が安定しない」などの現象が発生する可能性があります。
  • 同一ロットでも材料のランクによっては厚みや硬さが部分的に異なる場合がありますので、この場合もやはり「角度が安定しない」という事になります。
  • SUSやAL材には表面のキズを防ぐため、ビニールの保護シート付きの物があります。
    保護シートの厚さはメ−カ−、種類にもよりますが、約0.05mm〜0.10mm程度です。この保護シートは、メーカーによってシートの硬さや厚みが違う場合がありますので、数社のシ−トが混在しますと角度にも影響してきます。
  • 材料のロール目は曲げ角度に影響します。抜き方向の違う物が混在していると結果的に「角度が安定しない」という事になります。

[その他]
  • 「連転」などのモ−ドで使用している場合には、「加圧タイマ−」の値が極端に少ないと、角度がバラツク事もあります。
  • 中間板と上部テ−ブルの間、あるいはパンチと中間板の取り付けに隙間が生じている場合、比較的要求加圧力の小さなワ−クは曲がってしまい気が付きませんが、隙間のため製品角度が一定しない事があります。

[腰折れの影響]
「腰折れ」とは、主に大判薄板を加工する時に発生しやすいのですが、材料が跳ね上がる際に材料自体の重さがダイの肩にかかってしまい、肩を支点にして材料が変形してしまうことを言います。スコヤなどで測定すると“甘くなっている”と思われがちですが実際には正規の角度で曲がっています。“甘く”見えるのは「腰折れ」のためで、発生する原因の大部分は、材料の跳ね上がりをサポートする「人の手」の遅れです。
これを解消するためには曲げ速度を遅くし、作業者ができるだけ早めに跳ね上がりをサポートしてあげることが必要です。
また、プルバックD値が“きつすぎる“場合も、腰折れが発生しやすくなります。
この「腰折れ」は、SUSの鏡面材や塗装をした後の製品でひときわ目立つため非常に嫌われますし、製品の仕上がりがバラツク原因になることもあります。
左図のような箱曲げ製品のクボミも、「腰折れ」が原因になっています。

大判で薄板製品には、追従装置を使用すると材料の跳ね上がりをサポートする動作が一定のため、「腰折れ」による加工のバラツキを解消できることがあります。