6. ステンレス鋼板

鉄を主体として、Crのみ、もしくはCrとNiが10%以上添加されたものをステンレス鋼と呼んでいます。
ステンレス鋼は耐食性に優れており、メッキや塗装のなどの後処理の必要がない。製鋼工程から最終工程まで厳重な品質管理ができ、材料の内部応力は均一、平坦度も極めて良好のため、高精度加工に向いた材料である。
しかし、鋼材と比較するとタップ立て、溶接などの加工は劣る。
一般のプレス板金業では、SUS304、316、430材が主に使われている。

  • Cr(クローム):摩耗に強く、鉄を錆びにくくする。
    Ni(ニッケル):粘り強さを増し、特に低温で衝撃にたえる。
  • 鋼種は200番系、300番系等の呼び方で表される。
  • 結晶組織の分類はオーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系、折出硬化系がある。
  • オーステナイト系のステンレス鋼は、本質的には磁性を帯びない。
    しかし、曲げたり絞ったりすると、その部分だけ磁性体となり、磁性を帯びることがあるので、注意を要する。
    例えば、ソレノイドのブラケットのように磁性を嫌う場合は、曲げや絞り加工後に焼きなまし処理をすると非磁性にもどる。

 

【1.SUS200番系(201、202)】
組織・・・ Cr(16〜18%)、Ni(3.5〜5.5%)   例SUS201
Mn(5.5〜7.5%)
特性・・・ Niを節約しMnを添加したために加工性が良好。
耐食性は304に比べ落ちる。
引張り強さ 65kg/mm2以上(SUS201)
オーステナイト系組織、非磁性。
用途・・・ 鉄道車両部品、自動車トリム、ホイルカバー、食器類等。

 

【2.SUS300番系(301,302,303,304,305.309)】
組織・・・ Cr(18〜20%)、Ni(8〜10.5%)   例SUS304
Mn(2%以下)
特性・・・ 溶接、耐食性、深絞り性が良好。309はNi、Crの含有量が多く、耐酸化、耐熱材として利用される。
引張り強さ 53kg/mm2以上(SUS304)
オーステナイト系組織、非磁性。
SUS304は業界では「サス・サン・マルヨン」と呼ぶが、市場では 「18−8ステンレス鋼」と呼ばれる。
用途・・・ 建築装飾金物、一般家庭器具、ボイラー部品、科学工業、排気装置、食品設備、原子力用等。

 

【3.SUS310番系(310,316,317)】
組織・・・ Cr(16〜18%)、Ni(10〜14%)  例SUS316
Mn(2%以下)
特性・・・ Mo、またはMoとCuを添加したために、腐食性、非酸化性に優れている。海水や各種媒体に304より優れた耐水性がある。
引張り強さ 53kg/mm2以上(SUS316)
オーステナイト系組織、非磁性。
用途・・・

石油精製工業、染色関係、繊維関係、海洋事業等。


※その他 
  [SUS327、SUS347]
  Ti(チタニウム)等の含有で、特殊ステンレス材とされ
  航空機等に利用される。

 

【4.SUS400番系(403,405,410,430,434)】
組織・・・ Cr(16〜18%)、Ni(0.6%以下は可)   例SUS430
Mn(1%以下)
特性・・・ 304と比べると多少安価。耐食性は304よりやや劣るが室内なら錆びないので広範囲の業種で活用されている。
じん性力(ねばり)があるため加工しやすい。
引張り強さ 45、46kg/mm2以上(SUS403、430)
フェライト系組織、磁性。    405,430,434
マルテンサイト系組織、磁性。403,410,420J2,440B
430は市場では「18クロム・ステンレス鋼」と呼ばれる。
用途・・・ 一般家庭用器具、家電部品、機械構造用、厨房機器等。

 

【5.SUS600番系(630,631)】
組織・・・ Cr(16〜18%)、Ni(6.5〜7.75%)   例SUS631
Mn(1%以下)、Al(0.75〜1.5%)
特性・・・ アルミの添加で折出硬化性をもたせたバネ用鋼材。
引張り強さ 116kg/mm2以上(SUS631)
折出硬化系組織、磁性。
用途・・・ スプリング、ワッシャ、計器部品等。